紙とペンと君と

未来告 夜衣香ーーみくつ やいかーー

紙とペンと君と

高校最後の夏休み…

誰もが恋して燃え上がる


そんな青春を過ごしたい


そんな思いを果たすべく僕は


真っ白な紙にインクをつけたペンで思いを書く


思いのほかインクが滲む


思いを綴る紙を丸めることができなくて綺麗に畳んでゴミ箱に入れる


電子的な連絡手段が定着してしまった現代では数が少なくなってしまったいま


自分の気持ちを全て伝えるなら手書きの文の方が向いていると思ったのだ。




言葉で好きだと伝えるのはそれはそれで難しいけれど、その時は一瞬だ

でも、一瞬を刻み込むことも大切なのも分かっている


そういう考えがある僕だが


今回選択したのは思いを込めた文章だ


まず書き始めは

思いを告げよう


好きです



読み返したら恥ずかしくなってしまうかもしれない

それでも思いを書かずにはいられない

今書かないと後悔してしまうから


あの時言っておけば

あの時告白しておけば


そんな後悔はしたくない


熱くなる鼓動が伝わればいい

僕の思いが一方的であれ伝わってほしい

でもその文が独りよがりになっていないか気にしてしまう


きっと今の関係ではいられない

それでも構わない

ワガママな気持ちは理解している


断られるのは怖い


当然怖い


それでも言わない方が怖いのだ

このままではいずれ君は誰かと共に過ごすのだろう


直接手渡しした時

君は一体どんな顔をするのだろうか…


冗談かと思われて笑われるかもしれない


でも、もしかしたら…


そう思えば僕から生まれる言葉はどんどんと紙に書かれていく。


拙くてもいい


それがどんなにダメな文章であってもそれは僕の思いそのものなんだから


出来るだけ

間違いなく伝えたくても


震える手が文字を乱しても

それでもただただ言葉を紡ぐ



好きです


こんなことを伝えられても戸惑ってしまうかもしれません


それでも僕は君の笑顔が好きです。


毎朝、友達と話している時の楽しそうな笑顔


部活の時見かけた一生懸命な顔




そのどれもが僕の目を奪っていきました。


君の見る世界を一緒に見たい

夏の花火を、お祭りを君と共に見たい


その先も季節が変わるその時を一緒に過ごしたい


君にその思いがあるなら

僕の気持ちに応えてくれると嬉しい


ワガママなのは分かっています


それでも伝えなくちゃいけないと

僕自身が思ったので文章にしました。



僕は告白をすると決めた日

その手紙を自分の家に置いてきた


そのことに気づかずに僕は君を呼び出した


焦ってカバンの中を探すが無いのは分かっていた


それでも君は待ち合わせの場所にきた


ゴミ箱を溢れさせた紙とペンで築いた山


その気持ちは僕の中で言葉として記されていた。


「好きです」




ある日


僕はあの時と同じ気持ちでペンを握った


震える手に君が手を添える


紙にペン先が触れ僕の名前を記す


書き終えて君にペンを渡す


君も少しだけ手を震わせて自分の名前を書いていた。


終えると僕らは見つめあって、あの頃と変わらない可愛くて無邪気な笑顔を見せてくれた。


あの日渡せなかった手紙はいつか君に渡そう


笑われるかもしれない


それでも

僕は君の笑顔が見れればいい


あの頃積み重ねた気持ちの山を少しずつ君に伝えたい。

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紙とペンと君と 未来告 夜衣香ーーみくつ やいかーー @mikutu-yaika

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