フェイント

字・エンドロール

第1話

名が無いものをなんと呼ぶ?


名無し、と呼ぶ。


“名無し”が名になるのだ。


この世は“無”と“有”が同じなのだ。


無いものは、「無い」と意識されている時点でもう「有る」のだ。それはとってつけたような仮のものにすぎないが。


おかしいはずなのに誰も何も言わない。


言葉なんてそんなものだから。





それでも僕は求め続ける。


今は“無いもの”扱いだから、僕の器は仮だから、少しでも僕で“有る”ために


僕に名をくれよ。





“名無し”なのだよ。





僕の器は“無”にすぎないけれど、存在だけは“有”りたいんだ。





存在の証明書がほしいんだよ。





僕に名をくれよ。





存在だけでも名前だけでも“有”りたいから





“有”の名前をくれよ。


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