第4幕 カタストロフに導かれて

間章 羽虫の羽音



 どこかも知れない建物の中で、光を放つモニターの前に一人の男が立っていた。

 その男はモニターに映し出されたその、ありとあらゆる場所……世界中の光景を見て笑い声をあげていた。


「あーはっはっは。これで準備は整った。あとは私の声明を発表するだけだな。ああ、長かった。実に長かった。ようやく待ちわびたこの日がやってくるのだな。ふふふ……。これで等しく今まで私を馬鹿にしてきた愚者共に天罰を与えられる。故郷で私を能無しと蔑んだ奴ら、ぼろ雑巾を見るような目をこの私に注いできた虫けら、往来を行くゴミカス共……、どこへ行っても、奴らの醜い誹謗中傷は止むことはなかった。けれど、これでやっと、私は正しい立場に立つことが出来る」


 男は目には見えない人達へ話しかけるように、両腕を広げて言葉を続ける。


「崇めろ、恐怖しろ、地面に這い蹲って、許しをこうがいい! 私は無能などではない、クソ野郎でも、ゴミカスでも、ボロ雑巾でもない! 私の素晴らしさをすぐにお前達に見せつけてやる! せいぜい私の耳を退屈させない、無様な命乞いの練習でもしてるんだな!! あーはっはっは!! あーはっはっは!! あーはっは……げほげほっ、喉が」


 ごほごほっ……、がほがほっ……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る