第32話 非情の焦土遺跡 フレイム



 この世界には、超古代の旧文明がいくつも眠っている。それらは超便利アイテム、スフィアとして、遺跡の中にあった。そんなスフィア……もといお宝をハントし生活の糧とする者たちのことを、トレジャーハンターと呼んでいる。

 これは、そんなトレジャーハンターたちのある二人(と、一人格)の話。





――焦土遺跡 フレイム


 一面が焼け野原になってしまった後の、町だった何もない場所を赤風団の二人は歩いていた。

 近くには、焦土遺跡フレイムがある。


「この町はあの遺跡をベースにして発展していったんだ。便利なことに火力発電のスフィアがあったからね」

「まあ、町と遺跡がくっついて建ってることなんて珍しい事じゃないわよね」

「でも、ある日何者かの手によってスフィアは悪用され、町は一夜にしてこんなありさまになってしまった」

「あんたがこの町の生き残りで、その犯人を今までずっと探してた……。そしてその人物は今この辺にいる……。それでいいのよね」


 ルナの確認にガルドは頷く、一度聞き直しがあった説明はちゃんと頭に入っているらしい。


「トレジャーハンターになったのは、いろんな場所に言って情報を集められると思ったからさ」


 でもまさか、そんな情報をあそこで二度聞きされるとはおもわなかったけどね、とガルド。


「あ、あの時は考え事してたからっ……。それより犯人が、まさかあいつだったとは……」

「たしかに、やりそうな人格はしてるよね……」

『目的は一体何なんでしょう?』


 ルナの中の分裂人格ルピエが喋るが、ルナはいつものように邪険にはしなかった。


「ホント何かしらね」

「さあ、それは本人にきいてみない事にはどうにもね……」

「有益な道具が転がっていないか久々に見に来てみれば……。ならば、教えてやろう小娘小僧ども!!」


 見計らったかのような会話の隙間に男の声。現れたのは暗黒団の悪人だった。


「私には大いなる野望がある。その野望を達成するためには、多くの道具の力が必要不可欠だ。だから、私は考えた。道具ならそこらに歩いているではないか。生きた人間を、私の忠実な奴隷にするために、大量に得なければ……とな」

「なんて奴よ!!」

『信じられません……!!』


 憤慨する二人とは対照的なガルド。


「色々言いたいことがあるけど、君に聞きたいことがある。それで攫った人達はいったいどうしたんだい? 生き残ったのは僕だけじゃないはずだ。それと……彼女も……」

「ふ、そんな下らない質問か。まあいい、答えてやろう。こうなったのさ」


 暗黒団の悪人は、取り出したスフィアでそこらへんに生えていた草花を燃やした。


「それってっ!!」『そんなっ!!』

「大して役に立たなかったのでね、処分させてもらったよ。私のまわりをこざかしくも嗅ぎまわっていたあの女も同様だ。昔うばわれてしまったフレイムのスフィアを持っていたのは褒めてやるが」

「いつからか彼女に連絡が取れなくなったから、そうだろうとは思ってたけど……ルナ、そしてルピエ」


「ええ、分かってるわ」『はいっ、分かってます』

「皆の仇をここで取らせてもらうよ」

「焼き尽くせ!!」『灰塵と帰せ!!』


 ルナが火炎放射機を構え、火炎をばらまく。


「ふん、そんなちゃちな炎が私に効くとでも? 私にはこのスフィアがある!!」


 対する悪人はスフィアで、炎をまき散らした。

 一回りも二回りも大きい炎をスフィアから出して、だ。


「最初から、効くなんて思ってないわよ! ガルドっ!!」『ガルドさんっ!!』

「できる人間というのはね、本当に最小限の動きしかしないんだよ、っと!」


 あらかじめ悪人の背後に回っていたガルドは、手にするワイヤーを一気に引いた。……輪にしてから地面へ、あらかじめ落としておいたワイヤーを。


「くっ、なっ!!」


 悪人の足にワイヤーが絡まり、体勢を崩させる。

 自然、スフィアから放たれる炎はルナをそれる。


「『これがっ、あたしたちの力よ(です)!!』」


 畳みかけようとするルナとルピエ、しかし。


「体勢を崩したのではない。あえて、崩させてやったのだ。……油断させる為に、な」


 悪人は、懐からモノノフ遺跡で入手したスフィアを取りだした。


「見えないものを斬る力、くらうがいい」


 そして、言葉通り油断しているルナ達に向けて一閃。


「きゃああああぁぁぁーーー!!」


 スフィアの力は、ルナの体を切り裂いた。


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