第23話 悠久の屋敷遺跡 ホーム
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語であった。
――屋敷遺跡 ホーム
トレジャーハンター二ャモメ団の三人は、お宝であるスフィアをゲットするために、屋敷遺跡ホームを訪れて……持て成されていた。
『ヨウコソ、イラッシャイマシタ』
遺跡のガーディアンらしき樽型ロボットに歓迎されていた。
トレジャーをハンターする職業の、トレジャーハンターが。
「何か、そんなこと言われたの初めてなんだけど……」
「あはは、歓迎されてるー。ようこそ、だってー」
「おじゃましますっ。よその人のお家にあがったときは、こう言うんだよね。ポロン知ってる!」
数多くの遺跡を潜ってきた三人だが、こんな反応を返されたのは初めてだった。
『ゴシュジンハ、タダイマ、ガイシュツ、シテオリマスノデ、ショウショウ、オマチクダサイ』
「遺跡に、主人……?」
訝しげな声を発してミリは二人にどう思うかと視線で尋ねる。
ケイクはお菓子を食べている。
ポロンちゃんはお菓子を餌付けされている。
「ゴルァっ! 何が起こるか分からんのに遺跡の中でくつろぐなっ!」
『マチアイシツ、サンメイサマ、ゴアンナイ』
『ドウゾ、オメシアガリクダサイ』
食卓の上には暖かい食事。
待合室とやらに通されてしばらくたった頃だった。
「何か、料理までご馳走されてんだけど」
「わー、おいしそうだよっ。ポロン食べていいの? ありがとー」
「むしゃむしゃ、あむあむー」
ケイクはすでに食べていた。
「どうやって、材料調達してんの、これ」
ミリは怪しそうに、皿にのった料理をつついている。
『ジカサイバイ、デス。ヤシキノ、ナカニワデ、サイシュイタシマシタ』
「じかさいばい? 何それ」
ミリには分からない単語だった。
「へー、じゃあ必要な動力とかも自家発電してるのかなー」
『サヨウデ、ゴザイマス』
「じかはつでんって、何さ」
それも分からない単語。
「じゃあ、エレベーターとかエスカレーターとかもあるのかなー」
『ゴシュジンサマノ、ケンコウノタメ、シバラクカドウ、シテマセン』
「ふむふむー」
「えれべーたー? だから、二人だけで宇宙語で話すなっ、こらっ!」
分からない言葉の群れに置いてかれたミリはキレた。ケイクの皿の上の料理を腹いせに強襲する。
「めっだよ、ミリちゃん。食べ物は大事にしなくちゃ。……あれ、ポロン思い出したの。そういえばスフィアさん探さなきゃ」
メインディッシュのお肉にかけられたソースを口につけたままポロンが言う。
「探すって言ってもさぁ……」
「うーん、さすがに住人がいるのに盗るってのはねぇ……」
ミリとケイクは顔を見合わせる。
「ちょいと、そこの機械。あんたの屋敷のご主人様って、いつ帰ってくんの」
『ワカリマセン、シカシ。ソロソロ、カエッテクル、コロアイ、カト……』
これまで迷いなく紡がれていたことばが、曖昧になった。
「……ねぇ、あんたのご主人様って、いつ家を出たのさ」
ミリは、何か嫌な音でもこれから聞くので耳塞ぎたいです、みたいな顔をした。
『オヨソ……ニセンネント、イッカゲツ、マエニナリマス……』
「あーなるほどね……」
「うーん、そういう話かー」
「ふぇ?」
機械の返答に三者三様の反応。
「あのさ、こんな事いうのもなんだけど。……こんなに長い間留守にしてたら、えー……なんだ……帰ってこないかもよ? あんたのご主人。ここを出ようとか、他の人に仕えようとか、考えないの?」
『ゴシュジンサマハ、ゴシュジンサマ、デス。ホカノ、ドノオカタモ、ゴシュジンサマ、デハアリマセン。ソノセンタクハ、ソンザイシマセン」
ただ一人よく分かってない、ポロンだけが何も分からずにその言葉に返答した。
「そっかー。早く帰ってくるといいねっ」
「結局、スフィア盗らなかったねー」
「盗れるわけないじゃん、あの話きいて盗ったら、あたしら悪人じゃん」
「普段、悪人みたいな遺跡の壊し方してるけどねー」
「あぁ!?」
悪人みたいな声だった。
そんなトレジャーハンターの様子を陰から見ている存在がいる事に、三人は気づくことなく屋敷遺跡を後にするのだった。
「あーはっはっは、行ったな、ガキどもめ。おっと、いかん。静かにせねば。出来る人間は無駄な戦闘を回避するのだ。さっさとスフィアを回収するとしよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます