第21話 同舟の雪原遺跡 スノーホワイト
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語である……はずだった。
――雪原遺跡 スノーホワイト
ここに、そんな事とはまったく関係の無い事をしているトレジャーハンターがいたりもする。
白雪遺跡、スノーホワイトから離れた場所にて。
トレジャーハンターの赤風団のルナと、キャモメ団のミリが言いあっていた。
「さっむぅぅぅーーーいっ」
「ちょっと、赤風団の火炎女うっさいんだけど」
「何よキャモメ団の弓女、別にそんなのアタシの自由でしょ」
「何さ、こっちが見つけたとき
むむむむむ、と遺跡でもない場所でにらみ合う二人のトレジャーハンター
「なんで、あんたみたいな火炎ばらまき女と一緒に、人命救助しなくちゃいけないのさっ!」
雪の中に埋まっていたとみられる一般人の数人が、ソリ代わりの板切れに括り付けられている。
二人はそのそりを引っ張って歩いていている最中だった。
「それはこっちのセリフよっ、弓女! ていうかだいたいあんた達がいつものごとく突っかかってくるから、雪崩が起きて罪もない一般人が巻き込まれたんじゃないの!?」
「アタシ等のせいじゃないでしょ! どっかのおバカさんがそうやって大声張り上げるから
ぐむむむむ。むぎぎぎぎ。
「ったく、なんでケイクもポロンちゃんも計ったようにバラバラの方向に逃げるワケさ!」
「ほんとよ、ガルドの奴ぅ、右だって言ったのに左に躊躇なく行って……」
言い合いしつつもお互いの仲間への恨み言は一致する二人。
『あのー……』
と、ルナが別人格ルピエ(赤風団命名)として、気弱そうに口を開く。
『無線機で連絡を取ってみたらどうでしょうか。今なら皆さん状況も落ち着いているでしょうし、応答してくれるかも……』
で、その後に本人ルナが口を開く。
「ちょっと、人の口勝手に使わないでよ! あんたは許可なく喋んないで!あーもう、勝手に動かせるのが口だけでよかったわ。これで体まで動かされたら……たまったもんじゃない」
あんまりなルナのセリフだったが……。
「ちょっとさあ、そんな言い方ないんじゃないの。別にその子だって危害加えようとか思ってないんでしょ」
「黙って元凶。元はといえばあんたたちがスフィアをぶち割ったせいじゃない」
「ぐ……」
ミリがルピエを擁護すれば、元凶だけに黙らざるを得ない内容が返ってきた。
「あのー……」
「何よルピエ」
控えめな声にルナが反射的に怒鳴れば、
「いえ、下です。救助していただいた方です」
「え、ごめん」
ソリに乗っけられた方の声だった。
「喧嘩はやめておいた方がいいかと……。また雪崩が」
「う……」
最も関係のない被害者に言われて、今度はルナが黙らざるをえなくなった。
「あなた達はトレジャーハンター達なんですね、有名です」
「……ああー、行くとこ行くとこ騒動をまき起こす二ャモメ団……って?」
「ええ。行くとこ行くとも燃やしてくっていう赤風団の噂ね」
好き好んでやってるわけでもないのに、とミリとルナは二人して一緒に落ち込む。
「いえそっちではなく。何度も何度も遺跡で警報トラップを踏み鳴らして、雪崩を起こしていたのはあなた達ですか。おかげですっかりこのあたりの雪はすべり落ちやすく……、迷惑なので控えていただけると嬉しいのですが」
「いや、犯人に犯人かって言ったってねえ? 違うけど」
「同意しないでしょ普通。まあウチ等じゃないけど。」
今日、始めて来たしねぇ? と
顔を見合わせる。
「そうですか。あーはっはっは、という特徴的な笑い声が手掛かり……」
なんですが。
と言い終わる前に、二人は結論に気付いて声を上げ……、
「またあいつか!!」
まるで仲の良い姉妹の様に、声を合わせて叫んだ。
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