第2幕 明日を紡ぐ旋律
第14話 魍魎の絵画遺跡 カンバスタンド
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語であった。
――絵画遺跡 カンバスタンド
訪れた絵画遺跡の中……。
額に飾られた沢山の絵画が遺跡内部の壁にずらりと並んでいるその通路を、ニャモメ団の三人が歩いていた。超過去文明の超便利アイテムスフィアを得るために、こうしていろいろな遺跡に潜っているのだが。
「全部顔色の悪い人物画って、何この薄っ気味悪い遺跡。もっとましな絵はないの? 行くとこ行くとここんなばっかだし……」
入るなりそんな文句をもらしているの弓使いのミリ。
「何かー、ぜーんぶこっちに熱い視線向けてきてるから、なおさらだよねー」
対して薄気味悪いと思ってないような口ぶりの短剣使いのケイク。
「ミリちゃん、ケイク君そんな事言っちゃダメだよ。めっ。きっと頑張って描いたんだから」
遠巻きにするミリとケイクに代わって、そんな不気味さ満点の絵画達にも優しいのが踊り子ポロンちゃん。
極力壁の方を見ないようにしている二人とは違い、一つ一つ真面目に目を通していってる。
「ポロンちゃんはピュアだねー。でも頑張って絵を描くような人は何枚も何枚も、キャンバスの中に血の気の悪そうな人を描いたりはしないと思うなー。」
「ひょっとして、遺跡の中全部こうなの? うわ、帰りたくなってきた」
ポロンちゃんが、きっと描かれている間にじっとしてて具合が悪くなっちゃったりしたんだよ、とか言って名も顔も知らない画家をフォローしているが二人は聞いていなかった。
「あ、何かこの辺の絵画はちょっと変化出てきたねー」
「いやでもこれって……」
まともな変化じゃなかった。
人物画なのは変わらないが、背景の空が赤い。
月っぽい何かが青い。
ウサギとカメとクマと、ハチとかが合体したような奇妙な何かがある。
地面から意味不明な棒が天高くまで生えていたりもしている。
「「……」」
二人が言葉を失っていると、ポロンちゃんが空中に向かって話しかけ始めた。
「こんにちはー。ポロンはね、ポロンっていうの。え? 出口探してるの? 無理やりここに連れてこられちゃったんだ、ひどい人がいるんだね」
「ふぇ、姿? どうして見えるかって言われても。ポロン普通に見えてるよ。うん、そうなんだ。……つらかったね」
親身になって一生懸命に何かと話しているポロンちゃんの肩に二人は手を置いた。
「あの、ポロンちゃん一体誰と話してるのカナ?」
「ここに何かー、いるのー?」
そう尋ねる。この辺りに小さな生物がいるんだよ、という話ならまだしも。
「ふぇ、いるよ? ケイクくんそれをいうなら何かじゃなくて誰かだよ」
首を傾げるポロンちゃん。
どうやら、ミクロの生物的な何かでもなくはっきりと、人がいるのだと発言した。
「不思議そうにされた! てか、マジでいるの!?」「マジみたいだねー」
よく分からないといった表情だったポロンちゃんにつめよる二人。
「あ、こんにちはー。ポロンはね……ごめんね、こっちにもいたんだ。こんにちはー」
しかしそんな二人が何に驚いているのか、いまいちよく分かってないポロンちゃんは、いきなり周囲に向けてあいさつし始めた。
ミリとケイクは、その肩をがしっと掴む。
「逃げる」
「悪霊退散ならぬ人間退散だよねー」
「えぇえっ、どうしたのミリちゃんケイク君、急に走り出して。おトイレ近いの? お腹すいた?」
そんなので遺跡から出ようとしなければいけないのはポロンちゃんだけだ、と二人は言いたかったが言わない。言う余力を足につぎ込む。
「あ、こんにち、こっちにもこんに……わわわ、挨拶が追い付かないよ」
「どんだけいんの、この遺跡!?」
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