第6話 羽休めの休日 2 襲来のエッグエネミー
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさはさまざまだ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
しかしそんな者達、トレジャーハンターにも休息の日々があった。正しく休息かどうかはさておいて。
ポロンとミリの目的地の喫茶室に着くと、マッカとメッカが二人して難しい顔を付き合わせていた。
「こんにちわだよっ、マッカさん! ポロン、おいしいオムレツさん作りに来たっ!」
「何やら難しそうな顔してるねー」
「げっ、メッカ。雑誌は今探してる途中だから、今は忘れて」
やって来た三人に気づくと、マッカとメッカはよく似た表情を二つこちらに、同じタイミングで向ける。
「君達か、唐突だがこのテーブルの上に置かれているオムライスらしき物体、作ったのは誰だか分かるかい?」
「調理室が開いていたから、誰かが手作りしたんだろうと思ってね」
マッカとメッカの説明を受け、その物体に目を向け観察する。
黒かった。
オムライスだから卵で作ったはずなのに、表面がひたすら黒かった。そして水気を完全に失ってパリパリしている。ところどころはみだしたチキンライスは、赤じゃなくて緑色だった。米はねばねばしていてお隣の米と見分けがつかないほどくっついている。
「何……これ……」
「なまじ上にかけられたケチャップだけ普通なのがよけいにリアルだよねー」
「オムライスってどこにあるんだろう……。ポロンには見えないオムライスさん?」
ポロンちゃんに至ってはそれをオムライスだと認識出来ていないようだった。
「誰がこんな要注意毒物、作ったワケ?」
「この船にいる誰かなんだろうけどねー」
当然の疑問だった。
「僕らが来た朝にはもう置いてあったんだから、作ったのは夜中らしいって事は分かるんだがね」
「それだけじゃあ、製作者を絞り込めないしな」
ミリとケイクの言葉に、補足するようにマッカとメッカが続ける。
「ぶおー」
「どっちにしろこれ捨てた方がいいんじゃないの?」
「そうだねー。誰かがうっかり食べてお腹壊しちゃうかもしれないしー」
「ミ、ミリちゃん……ケイク君。ポロン何か聞いたよ。今ぶおーって言った?」
「へ? 言ってないけど……。そういえばそんな声が聞こえたような」
「下からだったよねー」
ポロンちゃんの言葉に目線を下げる三人。
テーブルの上のオムライス。異常無し。
「まさかぁ、いくらなんでも食べ物が喋ったりするわけないじゃん」
「だよねー、空耳かなー」
「ぶおー」
「「「…………」」」
再び目線を下げる。テーブルの上、異常無し。
異常なのはその下だった。
「もう一体(?)いる!!」
オムレツだった。ただし相変わらず表面は黒くて、ケチャップは普通だったが。テーブルの下から獲物を狙うような視線でこちらを見ている……ような気がする。
「あっ、あそこ。スクランブルエッグさんがいるよ!!?」
「何い! 三体目っ!! どうなってんの、これどういう状況!?」
「最近の卵って、調理すると動くんだねー。知らなかったよー」
「動いてたまるかっ」
そうこうしている内に何の影響を受けたのか、今まで皿の上でおとなしくしていたオムライスまで動き出した。
五人は自然に背中合わせになる。
「これからどうするつもりなのか……奴等は」
「日頃食べられている立場を逆転して、こちらを食べにくるとかだろうか」
荒事専門ではない、マッカとメッカは額に冷や汗をかいている。
荒事専門である、(よく分かってないポロンちゃんを除いた)ミリとケイクも額に冷や汗を浮かべていた。
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