第78話「くたばれッ! アリシア!!」

 ───アリシア……テメェとは離縁する!



「待ってよナセルぅぅぅううううう!!!」



 地獄の底から響くような声。


 クソ嫁────……いや、元嫁か。

 そいつが、亡者の如く砲身を這いあがってくる気配があるも、


「悪いな……。もう、お前とは他人だ。あばよ────」


 待ってってば! 

 ナセルぅぅぅぅううううう─────!!


 砲口からアリシアの悲鳴だけが聞こえていたが、ナセルは振り返らず、クレーンに乗って地上に戻る。


 傍に控えていた列車砲の指揮官に、

射撃シーセン ダ 用意だフォバハイトゥン目標ズィエル────王都にカヴァリンギメント接近中のニィアツィヒ デ 騎兵連隊ハウツシュタット


了解ヤボォル!』


 発射諸元が伝えられ、操作員たちがキビキビと動き回る。


 多少の方向修正があるのか、重々しい音と主に列車砲がズズズズと、レールに沿って動く。その姿たるや圧巻。



 ゴンゴンゴンゴン────……。



発射ベェハイト準備完了ズゥ シーズン! 総員アーレメナー遮風壁に退避イバァクイハァン!』


 砲員専用のヘルメットを被ったドイツ軍は、ナセルにも一つそれを渡し、全員がワタワタと分厚い鉄板で作られたシェルターに退避する。


 ナセルも近くのシェルターに案内されると、砲口からアリシアが逃げ出さないかと監視を続けた。


発射フォンデコォン5秒前ゥンデンシュタット総員アーレメナ-ヴェアザスショック姿勢ショッタィトン! 鼓膜をブライジニス破られるニヒトダスなよッットメンフェル!』


 ドイツ軍は指揮官に言われるままに、パカッと口を開け、両手で耳を覆う。


 すでにヘルメットには、防音のためにコルク栓や耳覆いが取り付けてあるというのに、だ。


 ナセルも真似をして、口を開けて耳を覆う。


(ちょっと大げさなんじゃ────……)


『────ドライツヴァイアインス…………発射スタートゥンジィ!』


発射スタートゥンジィ!』

発射スタートゥンジィ!』

発射スタートゥンジィ!』

発射スタートゥンジィ!』


 ───発射スタートゥンジィ!!!


 そうだ!

 発射の時が来た───!!!



 殺された両親の思い!!


 焼かれた大隊長の思い!!


 拐われたリズの思い!!


 そして、俺の想い──────!!


 知れッ!!

 知れッッ!!

 思いを、知れッッ!!

 

 すぅ、

「───思い知れ、アリシアぁぁああ!」

 

「ナセル?! た、たすけ────」


 ……あ、アリシアだ。


 すぅぅぅぅう……、

「───撃てぇぇぇぇえええフォィェェェエルッッ!!!」



 カッッッッッ───…………!




 ────────ッッッッッ!!!!!




 キュバァァアアアアアアアア───……!

 ───……アアアアアアアアン!!!!




「ほげぇえッッッ────!!」






 一瞬、閃光の中にアリシアが見えた気がした。

 だが、次の瞬間にナセルの体も激流に流される木ノ葉のように揺れ震える───、



「ぐおぉぉおおおおおおおッ!!」



 ───ブワァァァアアアア!!


 ビリビリビリと、鉄板が震えるほどの衝撃波がシェルターを襲うッ!


 これが列車砲発射の余波だとぉぉおお!?


「───ぁぁあああああああああああ!!」


 あああああはははははははははは!!!


 ───くたばれッ、アリシアぁぁあ!!


 防弾ガラス越しにも巨砲が唸りを上げて砲をぶっ放し、巨弾を遥か彼方に送り込んだ様子が目に見えた。



「はっはっはっはっはっはっは!! どうだアリシアぁぁぁああ! コージのなんて目じゃねぇぜ!」


 人類史上初!!

 お前のケツにブチ込むのは、デカくて太くて熱ーーーーーーーーーーーい、一発だ!!


 爽快に笑うナセルの周囲に、チャベチャと程好く焼けた──……。



「あーーーーーはっはっはっはっ!!」



 きっっっったねぇシュムッツゥイグス!!

 花火だぜぇぇえフォイアベェァグ!!


 ────はっはっはっは!


 パンブロートにはフォパンをブロート

 ブルッツには血をブルッツ


 すぅ、

「───ビッチビッチにはタイン列車砲ミットゥダをッッ!!」


 太くて、デカくて、大満足だろう!




 思い知ったか!!!

 アリシアぁぁぁあああああ!!!

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