第65話「アハトアハト」

 クゥィィィィイイイイイン!

 機械音を立てて電動駆動の砲塔が滑らかに動く。


 そして凶悪極まりない88mmアハトアハトが勇者コージを睨み付けた。


「うそぉぉん……」


 ブルブルと震える勇者コージ。


 チョロロロ……と鎧の隙間から小便が溢れ出る。


「た、タンマ」

「無理だ」


 じょばぁぁぁ……。



 撃てぇフォイア!!!




 ドンッッッッッッッ──────!!!




「ひで」ぶ──────ドッカァァァァァァァァァアアアン!!


 と、月まで吹っ飛んでいきそうなくらいの勢いで88mmアハトアハトにぶん殴られる勇者コージ。


 当然、爆発四散。



 死体すら残らない。



 だが、

「さぁ、復活するんだろう? ……来いよ────」


 ふふふふふふふ……。

 ふはははははは……!


「まさか、何回もぶっ殺せるとはな!!」


 くぅぅぅう…………!

 こんッッなに、嬉しいことはないッ!!


「はっはっはっ!!」


 何発でもぶん殴っていいなんて、こりゃああ、ボーーーーーーナスだぜぇぇえ!!


 

 ジュウウ────ブクブクブク……!!


「ゲホ、ゴホ……おええええ」

 発射フォイア

「ひ!」

 ドカァァァァァァァン!!



 ジュウウウウウウウ……ブシュウウ、ブクブクブク……!


「うげぇぇえ……ひぃぃぃ! や、やめろぉぉぉお!!」

 発射フォイエル!!

「ぎゃああ!」

 ドカァァァァァァァァン!!




 ジュウウウシュジュウウ……ブシュウウ……!


「ごめんなさい! ごめんあさいぃぃぃ!」

 発射シィセェン!!

「はばぁぁああ!!」

 ドカァァァァァァァァン!!





 ブシュウウウウウウウウ……ブシュウウ……!


「うらぁぁぁあああ!───舐めるなぁぁぁあ!!」


 何度目かの復活のさいに、ついにブチ切れたコージが動き出す。


 完全復活直前であったため、僅かにナセルの命令が遅れる。


 ドロドロの状態で動き出すものだから凄まじくグロイ……。


 そのままベチャベチャと走り、完全な姿となった頃にはティーガーⅠの前に立ちふさがるコージ。


 バババババババババ!──と前方機銃がコージを追い払おうと機銃射撃を開始するが、うまく死角に逃れたようだ。


「ひゃは! ひゃははははは! これでも喰らえぇぇぇ!!」


 ブォンと振り上げた聖剣が、神速でティーガーⅠを貫かんとする。


「俺は勇者だぁぁぁあああああああ!!!」

「そ・れ・が・ど・う・し・た・ッ!!!」


 パッキィィィィィイイン!!


 ヒュンヒュンヒュン────。サク。


「へぁあ?」

 コージの目の前でポッキリと折れたのは聖剣(笑)とやら。


 ティーガーⅠの正面装甲には僅かに斬り傷が……?

 いや、塗装が剥げただけか?


「あへ? 剣、折れちゃったよーあばばぁ」


 へなへなと、しゃがみ込むコージ。

 あ、足に聖剣の破片が刺さっとるがな。


「折れちゃったねぇ…………────」


 つーか、ね……。

「───ドイツ軍製の装甲板に効くわけねぇだろ! ボぉケぇぇ!」

「うひゃぁぁぁぁあああ!!」


 じょばぁぁぁ────とこれまた盛大に放尿するコージ。


 どいつもこいつも───。


 ティーガーⅠ戦車の正面装甲は100mmだっつの!


「ひぃぃぃ! う、撃たないで!! ゴメンなさい。ゴメンなさい! 何でもします」


 何でも?


「───じゃあ、死ね」


 ナセルは一言。

 あとは知らん。


「やだーーーーーーやだーーーーーーー! ドカーン!──は、やめてぇぇぇ!!」


 あっそ。


 じゃ、

微速前進レディコンマルシユ

了解ヤボール


 小気味のいい返答とともに、ギュラギュラと動き出すティーガーⅠ重戦車。


 メリメリと音を立てて石畳を砕いていく。


 そして、勇者コージも……。


「ひぎゃあああ!! 嘘ぉぉ? ヤメテやめて!! オネガイシマスゥ──うわーーーーん!!」


 ブリブリブリブリブリブリブリ……!!


 鎧の隙間から悪臭が漂うも────。

 すぐに、


「あぎゃああああああ────ブフッ」


 ブチブチブチブチブチブチブチ……!!


 と何かを曳き潰す、嫌~な音……。


踊ろうかビッテ ディガン戦友諸君カメラード

『『『了解ヤー!』』』


 乗員たちがノリノリで反応。


 操縦手が操作レバーを、ブッ違いにして操作。

 左右の履帯が前後逆に動き出し、重戦車がその場で超信地旋回を始める。


 ゴリゴリゴリゴリと石畳をすり潰しながら、その下の勇者だったものを丁寧にすり潰す。


 そして、その下で復活したのだろう。「ぎゃぶぅぅ!」と聞こえた気がしたが、知らんな。


 何度目かのブシュウウ────という、禍々しい魔法陣が戦車の下で現れては悲鳴が聞こえていたが、それもそのうちに聞こえなくなってきた。



 さぁ、何度でも復活して見せるがいい!

 俺のドイツ軍が相手になってやる!!


 ま…………。


 もっとも、…………もう、立ち上がることもできないだろうがな!!


 思い知ったか!

 間男ッッ!

 そして、


 クソ野郎で、クソまみれの、クソの塊の、





 勇者コーーーーーーーーーーージぃぃ!!

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