第45話「怒りの鉄槌(後編)」

 ──伏せろぉぉぉおおヒンレーゲン!!

 ──総員アーレメナー伏せぇぇヒンレェェェゲン!!!


 大声で復命復唱!!

 注意喚起の声が伝播していく。


 ドイツ軍は地べたに這いつくばる。


 それを遠目に見ていた国王が大笑いしている!


「がっはっはっはっはっは! 見ろぉぉ、者共ものども! 異端者どもが這いつくばっておるわ! 今さらゆるしを乞うつもりらし──」


 だがドイツ軍はガン無視。


爆発するぞぉぉフォォォレデコォォン!! 総員アーレメナー伏せろぉぉヒンレェェゲン!!』


 

 ジャジャジャジャ────、

 ジャアァァア゛ア゛ア゛ァァ────!!



 ──────……ドコォォォオン!!



 来たッ!!



 最初は一発────。

 ズズン……と『大障壁』が揺れる。


「ぬぐぉ!? ば、馬鹿め! 貫けると思うてか! 我が城の守りは鉄壁────」



 ドコォォォオォン!


  ズドン!! ズドン!!!


   ドコン、ドコン、ドコン!!!

  

「む、無駄じゃあ! 異端者の魔法なんぞ、効くわけがなかろうが!」


 ドコン!!

 ドコン!!


 ズドォォン!!


 ッッ!! 揺れる大障壁。


「む…………無駄無駄ぁあ!」

 ふんぞりかえる国王。


 ドコン!! ドコン!! ドコン!!

 ズドォォン!!


 ピシッッッ!!


「あ……諦めたほうがいいぞ!──うん」

 気を付けの姿勢の国王。


 ドコン!! ドコン!! ドコン!!

 ズドォォン!!


 ビキキキッッ!!


「ち……ちょっとやり過ぎだぞ!──ねぇ」

 背中を丸める国王。


 ドコン、ドコン、ドコンズドンズドン!!

 ズドォン! ズドォォン! ズドォォン!

 

 ッッ! ッッ!! ッッッ!!!


 あまりに激しい爆音に周囲の音が消えていく。


 だがドイツ軍はめない。


 とーーーーーぜん、


 撃ちまくる。

 撃ちまくる。

 撃ちまくるッ!!

 

「無駄だって言ってるだろうッ、だかれ止めて! ねぇってばぁぁあ!」

 国王がなんか言ってるが──知らんッ!


 撃て、撃て、撃てぇええ!!

 奴らを打ち砕け砲兵よッッ!


 ッッ! ッッ!! ッッッ!!!


「しつこい! 効かん! き、効かんよね? ねぇ? ねえねえ?!──……もうぅうぅ!!」


 国王の叫びも次第に爆音にかき消されていく。


 猛烈な爆炎に包まれる王城の上部の大障壁。

 その様は、まるで活火山だ。


 それを彩っているのはドイツ軍砲兵射撃。

 あきれるほどの砲弾を撃ち込んでいる。


 そのうちに、何発かは王城をそれてどこへやら?

 そのいくつかは戦場に落下──。

 狼狽え弾が、王城を逸れてナセル達が先ほどまでいた戦場に降り注いでいく……。


 あ、あいつら死んだな。

「「「ぎゃああああ!!」」


 無防備に戦場で一塊になっていた近衛兵たちに直撃。

 そいつらは口から内臓をふき出して空に舞い上がる。


 砲撃と重力で内臓が押しつぶされているのだろう。


 吹っ飛んだ連中はもれなく即死だ。


 爆発の危害半径にいた連中も破片と爆風に切り裂かれてズタズダ。それでも、まだまだ前進してくる集団もあるが、控えめに言って突撃の第一波はほぼ壊滅している。


 砲兵射撃に慈悲などない。

 弾は落ちれば爆発。

 敵味方の区別なく、落ちれば爆発するのだ!


 だからドイツ軍は地面に這いつくばっている。目標から逸れて爆発するなど日常茶飯事なのだ。

 実際に狙った場所でなくても、その余波でこれだ。


 ぐちゃぐちゃになった近衛兵たち……。


 ドイツ軍が慌てて後退するのも頷ける。



 ドゴォォォォォン!!

 ドゴォォォォォン!!



 ナセルも地面に這いつくばり、首だけ動かして『大障壁』を確認する。

 連続する砲撃にブルブルと震えている。

 いまだ、貫通弾こそないが────。



 ドコォォォォォン!!

 ズガァァァァァン!!



 ピシ……。

「ちょ!? やり過ぎ……!」

 あまりの連射に国王が顔面をひきつらせている。あのふんぞりかえっていた様子はどこへやら?



 ズガァァァァァン!!

 ズガァァァァァン!!




 ビキキキ……。

「もういいだろ?! 無理なんだって!」



 バガァァァァァン!!

 バガァァァァァン!!





 メキャ…………。

「ごめん!! もう、ごめん!! 効かないから、ね? お願ーーーい!!」




 バゴォォォォォン────バキィィン!!

「嘘ぉぉぉおん?!」


 オーマイガッと頭を抱える国王。

 だが、その様子とは真逆にナセルはガッツポーズを決めるッ!


「通った!!」

 イイイィィエス!!


 あの『大障壁』に穴が!

 そして、その影響で連続してひび割れていく虹色の障壁。


「ぬわにぃぃぃぃぃいい!?」


 驚愕しているのは国王。

 そして、城壁上では虹色の障壁に隠れて見えなかったものの、多数の魔術師らしい連中が次々に倒れている。


 バタバタと倒れている連中は恐らく障壁の魔力元なのだろう。

 古代のなんたらとはよく言ったものだ。

 結局、発動と維持には魔力が必要で、負荷を受け続ければいずれ破綻するということ。


 今は大障壁の一部が破られたため、魔力の揺り戻しで魔術師のうち消耗の激しかったものから昏倒しているらしい。

 要するに魔力切れだ。


「な、なんてことを!? わ、ワシの城がぁぁ!!」


 騎馬戦車の上で腰を抜かしているのがここからでもよく見えた。にしてもデッケェ声だなあの野郎。


 そーかそーか。

 そんなに城が大事か……、

「いいぞ! そのままブッ飛ばしてやれ!」


 まずば、投石器から!

 そのあとでジックリと、楽しみながら城ごとぶっ潰してやる!


やれッギィッヒ!」


 どこか遠く……いや。教会で展開しているという砲兵から『了解ヤヴォール!』と聞こえた気がした。

 



「──砲兵よアーテラリィ! 撃ってくれビッテ シィィセン!」

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