第21話「神殿騎士団vsドイツ軍歩兵小隊」
──グルゥァァァァァァァアア!!
「来るぞ! 少尉────
『
迫りくる1000体の
彼らは一度命令を下せばあとは自分たちの判断で動くことができる。
『
《ザ……
召喚したドイツ軍一個小隊の指揮官である少尉は傍らに置いた無線機に指示を飛ばす。
非常に高性能のそれは鮮明に声を中継してくれる。
それにしても、無線で返答した迫撃砲手はいったいどこに────?
…………。
……。
バコォォン!!
教会に続く大きな通りの遥か先。
隠れる気もなく、堂々とした様子で軽迫撃砲一個班が50mm迫撃砲をズラリと並べていた。
小さなそれはまるでスコップを地面に押し付けたような形状。
先端にあいた口径の大きさから小型迫撃砲の『50mm
彼らのうち数名がそれぞれ3門の砲に取りつき、
軍曹の階級章をつけた迫撃砲班の指揮官が着弾観測と修正射の指示を出している。
『
『
『
砲の操作手は迫撃砲の弾を半分だけ装填した状態で待機──半装填から、軍曹の指示に従い引き金を落とす。
ズドォォォン!!!
口径の割に大きな音。
底板が石畳にめり込みヒビが大きくなる。
恐らく迫撃砲の発射の衝撃はすさまじいものがあるのだろう。
下から見上げると迫撃砲弾がヒュルヒュルと打ち上がるのが見えた。
そして、一瞬ののちにそいつは1000体の
ヒュルルルルルルルウゥゥゥ…………、────ッ。
──ボォォオン!!
『
『『『
ガチャガチャと砲を操作する砲手たち。
基準となった迫撃砲と同じ照準に設定しているのだ。
手慣れた様子で操作を終えると、50mm砲弾を半装填。
『『『
『
ズドドドォォォォォン!!!
3門同時一斉射!
それは曲射火力の威力をまざまざと見せるに十分だった。
砲門からの噴き戻しに、兵の軍衣がバタバタと波打つ。
その先には、ギラギラと輝きながら硝煙の尾を引いた3発の50mm榴弾が1000体の
降り注ぐ……降り注ぐ!!
降り注ぐ!!!
何発も、
──さらに何発も、だ!
ドガァァァアン!!!
ドガァァァアン!!!
ドガァァァアン!!!
※ ※ ※
ヒュルルルルルルーー……ズドーン!!
空気を切り裂く音のあと、頼もしい爆発音が響き渡る。
その音が飛来する度に奴等が木っ端微塵に砕け散る。
今も、
ナセルの目の前で、ドッカ~~~ン! と爽快に吹っ飛んでいくのは、教会のいう本物の神殿騎士団とやらだ。
連中ときたら、腐った死体に白骨死体。
おまけにミイラ化死体に死蝋化した死体どもだ。
そいつらが迫撃砲の爆発を受けてがバラバラと吹っ飛び、ぶっ飛び、かっ飛んでいく。
うううー……。
あうあうー。
ぐるるる……。
唸り、ボロボロの剣や槍を構えた
ジリジリと接近しているも、連続して降り注ぐ迫撃砲弾により、その大半がただの死体に戻る。
1000体の神殿騎士たちは──その
ただ、まんじりと砲弾に焼き尽くされていくのみ。
その様子に自信満々だった神官長が、口をパクパクとさせて二の句が継げなくなっていた。
それというのも、ここに来るまでに、
ナセルは小隊長の助言に従い、戦端を開く前に迫撃砲班を展開させていた。
もともとは教会本部をぶっ飛ばしてやるために展開しておいた迫撃砲班だったのだがが、もう役に立っている。
それにしても彼らはどこから?
『ドイツ軍歩兵小隊』。
ステータス画面を呼び出して確認したところ召喚獣Lvは短期間で上昇していた。
分隊から小隊に進化したとたん、ドイツ軍のやれることは飛躍的に増えて、選択肢もまた多岐にわたった。
内訳として、通常の分隊が3個の他に、
指揮官として小隊長が一人、
そして、軽迫撃砲班が一個追加されているのだ。
これで一個小隊なのだ。
ドイツ兵一人でも馬鹿のように強いというのに、
それが分隊。しかも3個。そして迫撃砲班が追加されている。
やべーのなんのって。
それにしても、曲射火器と言うものは初めて見たが凄いものだ。
敵の武器の届かない遥か遠くから一方的に叩くことができる。
その威力は遺憾なく発揮されており、ズドン、ズドン、ドカ~~ン! と降り注ぐ砲弾が、面白いくらいに動く死体どもが吹っ飛んでいく。
奴らは鈍く、臭く、脆い。
確かに恐ろし気な風貌で、見るものの嫌悪感と恐怖を誘う。その上、元々死んでいるのだ──少々の撃ったり、切ったり、くらいでは死なないのだろう──。
だが、
「──バラバラにぶっ飛ばせば、生きていようが、死んでいようが同じことだろう?」
ニヒルに笑うナセル。
その笑いの向こう側で神官長は顔面真っ青だ。
「な、ななななな! なんですかこれは!? ああ、あ、アナタは雷魔法を使っているのですね!」
ドイツ軍の兵器を知らないものからすれば──なるほど……魔法だろう。
──だが違う。
これは人の……。いや、殺しの叡智の結晶なのだ。
「やはり異端者ですね! 隠れてコソコソと魔法を使う者がいる──……たが、私を舐めないでもらいたい!」
ドン! と錫杖をついた神官長は朗々と詠唱を開始する。
「────……神よ。不浄なるものから我らに守りを。
シュパァァァ! と神官長を中心に光のドームが広がって行き、神殿騎士団を含む戦場を大きく覆っていった。
「見なさい! これが神の奇跡の賜物──……! 神官術最高位の結界魔法です! 異端者ごときの魔法等、なにほどの────」
ドカン、ボォン、ズゥン!!!
物言わぬ屍どもが、グッチャグチャになって吹っ飛んでいく。
もう~……、臭気が凄い。
「…………え? あ? あれ?」
「ばーか、魔法なものかよ。……もういい、ケリをつける。テメェらの匂いにはうんざりだ──少尉、さっさと殲滅しろ」
『
『『『
ジャキジャキジャキジャキジャキジャキ!! 凄まじく暴力的な空気を漂わせてドイツ兵達が一斉に銃を構える。
ナセルもⅡ号戦車の砲塔に潜り込んだ。
『
バンバンバンバババババババババババババババババン!
なんとか50mm迫撃砲による砲弾のカーテンを切り抜けた
しかし、彼らが攻撃しようとしている相手は無防備な兵ではない。
ドイツ軍歩兵。彼らの構える小銃──。
モーゼルK98──ボルトアクション小銃、口径7.92mmの高威力小銃弾を発射することができる。
こいつぁ、人間なんて一発でも当たれば、グシャリと潰してしまえる。
動く死体なら──頭部に当たればボォンと、木っ端みじんだ。
そして、
連続射撃のあとに、バタバタと倒れ伏す
何体かは生きて? いるようだが、それはただ破壊を先延ばしにしただけ。ドイツ兵の隊列に取りつくこともできない。
そりゃそうだ。
真打ちは小銃兵じゃない。戦場の神──いや、
戦場の死神────、
『
攻撃命令を受けた各分隊の下士官は
それが各分隊ごとにひとつ。
計3個班の三挺だ。
『『『
澱みのない動作で機関銃を操作する兵たち。
その動きは洗練されており、一個の機械のよう──。
彼らの動きが暴力に満ち、殺気が溢れたとき────……カタン、と無慈悲に引き金が落とされた。
バババン……。
ババッババババッバババッバババッババババッバババババ!!!
いや、それは慈悲だ。
死してなお囚われ、酷使される哀れな死者たち。
それを解き放とうというのだ。
そう、魂を──……。
腐った肉体と言う枷。
骨という檻──。
──そして、教会という鎖から。
彼らを旅立たせるのは機関銃。
分隊ごとに一挺の支援火器。
その名は、
MG34──多用途機関銃。二脚で運用すれば軽機関銃として、三脚に乗せれば重機関銃として運用可能。
7.92mm弾を毎分800発で発射できる優秀な機関銃……。
それはそれは、無慈悲で苛烈な戦争の道具。
黎明期のドイツ軍を支えた傑作機関銃だ。
「な、なななななな! 何ですかそれは、何なんですか貴方達は!」
銃弾降り注ぐ戦場と化した教会跡地で、我には関係ないとばかりに無防備に突っ立つ神官長。
拷問官たちに守られているも、
その周囲にもブスブスと銃弾が突き刺さるが、奇跡的に一発も当たっていない。
奇跡?
違う、ナセルがわざと当たらない様にあらかじめ指示をしているのだ。
流れ弾で死なれては……たまらない。
もっと酷い目にあってもらわなければな。
「少尉、後は頼む──Ⅱ号戦車ッ、出るぞ!」
『
少尉の敬礼を受けて、ナセルは砲塔に体を潜り込ませると操縦手に前進を指示する。
「
『
ギャラギャラ!!
Ⅰ号戦車よりも遥かに力強いエンジン音。
そして速度!
動き出した鋼鉄の騎馬は石畳を砕きながら前進する。
その前には、迫撃砲の弾幕を抜け──銃弾で撃たれつつも取りつかんとする死者の群れがいたが……────いたが? それがどうした。
バリバリバリ!! と、まるで製材所で木を加工する様な音を立てて死体をドンドン轢き潰していく。
時々、コンコン、と装甲板をノックするような音を立てているのは何だろう?
そっと視察孔から見れば、
「はっはっは! 効くわけねぇだろ──軍曹」
操縦している戦車兵に話しかけるナセル。
ニィィィと口の端を歪めると、
「
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