エピローグ
「で? 何で俺がドラゴンの名前を考えなきゃなんねぇんだよ?」
ラナンが頬杖をついて造作なくページを捲った。
「だって……フォセは気象学の実習で、チニもついて行っちゃったし……ラナン、もうドラゴンに名前つけたんだよね」
「ああ、セレナって名前だ」
「どうやって決めたの?」
「え? どうやってって……そりゃ、何となく鳴き声で……」
「ぷっ……あはははっ! 幼竜って「セレナ」って鳴くの?」
「べ、別に良いじゃねぇか! 気に入ってくれたみたいだし! てか、静かにしろよな! ここ、図書館だぞ!」
「ふふふふ……ごめん、ごめん」
スラウは小さく手を振った。
ラナンは目の前に山積みになっている分厚い本の山を叩いた。
「それにしても、こんなに本持ってきて何すんだよ?」
「光の天上人に関する情報はほとんど公開されていないから……ここにある歴史本から偉人を探して似合うものを探すのっ!」
スラウは擦り切れた赤い背の厚い本をラナンの前に置いた。
「何時までかかんだよぉ……」
情けない声を上げてラナンが机に突っ伏した。
***
「……てなわけで考えた」
スラウは手に握った小さな紙切れを振った。
ドラゴンは太い首を曲げるとじっとそれを見つめた。
朝日を浴びて光るその瞳は金よりも強い光を放っていた。
「ラダルでどう?」
『ラダル』
「ラダルフェリ・ロヒナンテっていう人から取ったの。「空駆ける獅子」って異名を持つ風の天上人。空の覇権争いに終止符を打った人で今でも英雄として風の領域で崇拝する人もいるんだって。どう?」
『気に入った。お前が考えたのならそれで良い』
「ん……」
眠そうに目を擦るスラウを見てドラゴンが笑った。
「何?」
『いや、別に』
ドラゴンは首をもたげて朝日を仰いだ。
黄金色の太陽が赤茶けた大地に射し込んできた。
天上人 @oniki-alpha
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