第23話:記録試験3
「おー!やってるやってる。」
聞き覚えのある声。
まだ起き上がれなくて、首がそっちの方に向けない。
「カレンさん!どうしてここに?」
ローリアさんが介抱してくれながらカレンちゃんが来てくれたことに驚いている。
「どうしてって、疲れたのと、あのクラリスって堅物があ〜だこ〜だ言って面倒臭くなったので休憩にねっ。」
やっぱり、我慢できなくなったのか飽きたので出てきましたか。
「で、どうなの状況は?」
「芳しくない。」
ヤヒスさんが近寄り棒か何かで僕をつつく。
「説明長くなるけど・・・」
口を開くのが億劫な僕に変わって、キョウコさんが説明をしてくれた。
「ふーん、そう。」
カレンちゃんは聞いてきたのに結果に興味が無いような返事をした。
ここにいる女性陣にも喧嘩を売らなければいいんだけど・・・
「・・・ねぇちょっと休憩しましょ。」
これから続けるかどうか解らないけど、カレンちゃんが仕切りだした。
こーなにを考えているのか解らないけど、彼女はこう言い出すとたいてい周りの空気を読まずに勝手に行動する。
大丈夫かなぁ?
そんな思いをよそに、僕の方に向かい、かがんで顔を覗くと。
「とりあえず、ほらジョナサン。これでも飲んで。」
水筒のキャップをあけ、ヒーリング中の僕の身を起こして飲ませてくれるカレンちゃん。
珍しく、カレンちゃんが優しい。
子供の頃も病気だった時、カレンちゃんもこんな感じでやさしかったなぁ。と思ったけど。
カチッ。何かの音がカレンちゃんの水筒から音がした。
そして飲んでいる水の二口目で熱い何かが喉を通った。
『ぶほっ!』
僕は今飲んでいた物を吹き出した。
綺麗な噴水をローリアさんに吹きかけ事だけは避けたが喉元から胃にかけて熱い。
「カレンちゃん!これ!お酒!」
カレンちゃんの目が怪しげに光った。
「そうよ。お酒よ。」
それはカレンちゃんが身を守るために持っていた隠しスイッチが付いた水筒で、スイッチを押すと、どきついアルコールが出るように切り替えられる。
トラブルがあったときに、相手にのませて酔っ払っている隙に逃げ出すという、淑女の嗜み的な装備品だった。
「どうしてこんな時にお酒なんて・・・ひっく!」
やばいもうアルコールが回ってきた。
相当度数の高いアルコールだ。
この状況で酔っ払って、さらにみんなに迷惑を掛けたら・・・
「大丈夫よ、ジョナサン!ほらもう一度やってみなさい!」
そういうとカレンちゃんは僕の背中を叩いた。
さっきのダメージは全快していた。
アルコールの回復は、多分冒険者さんでも出来ないだろう。
「大丈夫ジョナサン?」
ローリアさんが心配してくれている。
酔っ払った頭だと返事も適当になっていた。
「だいじょう、ぶ・・・らいじょう・・・ぶ!」
あんまりローリアさんを心配させたくない。
足はふらついたが、意識を集中させることは出来た。
タイタンもちょっと心配そうに見ていたが、身構えようとした。
「ほれしやぁ、いひまふよ〜。」
が相手の準備出来るタイミングを見誤って剣を先に振り下ろした。
ゴゥワァ!
風が巻き起こった。
みんなが目を見開いているのが解る。
やがて風は収まるとタイタンの横の地面が深くえぐられた後が出来ていた。
タイタンはその跡を見るとゆっくりと僕の方を見て、次の攻撃を警戒した。
「ありゃ、ひっく!はずれちゃったぁ〜じゃぁ〜次っ!」
僕はしっかり狙いを付けて、もう一度無意識に剣を振り下ろす。
今度はタイタンが慌ててよけた!
よけたが、勢いが彼の硬い皮膚を勢いよく削り幾分ダメージが乗ったようだ。
「こりゃぁ!よけるなぁ〜よけると試験ににゃらにゃ〜!」
ろれつが回っていると感じはしていた。
「これはどういう・・・」
アナハイムさんのクランメンバーを始め王宮の調査団も面を喰らったようだった。
「昔からジョナサンはアルコールに弱いのよ。でも飲んだ後のもめ事に強かったの。魔王倒したときも飲んでたって言ってたからああそうなんだ〜みたいな。」
「それで倒せたのか!魔王を!」
ミハエルさんとホーウェンさんが同じタイミングで叫んだ。
「でも、そうだったら過去に死人は出していたはずなのよね。
彼も豚箱行きになった事はないから、他にも要因はあるんじゃない?良くわからないけど。」
カレンちゃんはその先は興味無いと言った口調だ。
「でも、あれをみると、ジキルとハイドですね。」 ミランさんも僕の攻撃の威力を注視して状況を確認している。
「バグかのぉ。想定していなかったバグでもあったかの。」
「いかん!ジョナサン!ストップ!ストップだ!」
今度は、ドゥベルさんが、タイタンと僕の間に入って。僕の剣を受け止めた。
僕の剣の風圧でドゥベルさんの髪や衣服に風圧がのしかかる。
眉間に力が入っている。
結構力を入れているのが解った。
NPCが冒険者にPKをする事は出来ないがダメージを感じる事ぐらいは与えられる。
ガイン!最初にタイタンに切りつけたときより重く分厚い鉄板を弾いたような音がした。
僕とドゥベルさんはお互いの武器の威力で弾かれた。
ドゥベルさんはタイタンに背中を受け止められ、僕はローリアさんのそばに着地した。
「ここまでだ、ジョナサン!」
手の平で僕の方に向かって制止のポーズを取るドゥベルさん。
「はいっ!」
ペットの犬ように、急に動きを止め直立し、忠実にドゥベルさんの言うことを守った。
酔っ払っていても、そうするのは絶対であると強い意思が残っていた。
だけど、一瞬で体が急に力が抜けてふぬける。
足からがくっと地面に落ちそうになったが、ローリアさんが支えてゆっくりと地面に下ろしてくれた。
僕の意識はそこで途切れた。
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