第19話:カレン・コートルーム

武器屋オルス・フラの3階。

誰も居ない。

ここから誰かが去った痕跡もない事も調べて解った。

つまりカレンちゃんは今、『冒険者A』と一緒じゃない。

いきなりの遭遇も想像したが、杞憂でまずはホッとした。

店のなかで暴れられでもしたら、店内を荒らされる可能性とかも想像していたけれども、今は別の意味で、ぐちゃぐちゃになっていた。

「その格好、王宮勤めか何か知らないけど、あなたはどうせ、今回の騒動にかこつけて美味しい思いをしたいんでしょ?」

「そりゃ公で派手に結婚式を挙げ、即離婚した報酬と慰謝料目当ての誰かさんと比べたら、私の王宮から出る特別手当なんて、大したビッチ度ではございません。」

何故か、対決姿勢な二人。

どうしてこうなったの?

「ちょっとあなた、その下品な呼び方辞めてくれない!?王宮の人よね。そんな言葉使い良いのかしら。」

カレンちゃんは、必死に顔に感情が出ないようにしているが、口元がヒクついている。

「庶民の貴方に言われる筋合いは御座いません。それに、ちょっと有名になったぐらいで、私達と同族になった様な横柄な態度はどうかと思います。」

売り言葉に買い言葉。

「あの・・・2人とも?」

割って入って収拾を着けた方がいいとは意識しているけど、入れる隙間が全くない。

「相手が誰だかも分からずに、いきなり押さえ付けて、拘束するのも王宮人なんだぁ〜?」

「誰も居るはずのない店舗に人が居たら、それは不審者以外居ないでしょう?」

そりゃまぁそうですね。

まさか、カレンちゃんが居るとは思わなかった・・・

「ここは馴染の店だから、ちょっと身を隠すために居させて貰ってただけの何処が不審者?」

「武器も持たない街娘が、武器屋の馴染みとは。可笑しな話です。」

「そこの男と幼馴染だっていってるの!そこの男と!」

「何を言うかと思えば、ご主人の許可を得て無いのは存じております。扉に鍵がかかっている状態で中に人が居れば不審者でしょう。ああ失礼、不審ビッチでしたね。」

「だからビッチビッチ言うな!」

不審者扱いの方は良いのかなぁ〜?

「思い出したわ。貴方、あの結婚式の準備をしていた時の女中長ね。部下を叱責していたから覚えてるわ。酷い女中も居たもんだと思ったけど貴方だったのね。」

クラリスさんは深いため息をついて言葉を続けた。

「あの時は、通常業務をこなしながら貴方の式の準備をこなさなければならないのに、直前でドレスが気にいらない、式場の装飾が嫌だ、あまつさえ、神父はイケメンにしろだとか、参列者の前面はイケメンで揃えろだとか散々文句をつけて、タダである事を良いことに言いたい放題、やりたい放題。どれだけ貴方に振り回されたと思っているのですか?」

ああ、そうだったんだ・・・あの時の準備大変だったんだ。

僕はクラリスさんに少し同情した。

クラリスさんの無表情の顔の眉尻だけ上がって、明らかに不機嫌なのが気にる。

「そんなの、私が自身が身を呈してイベント報酬になってあげたんだから少しぐらい融通を利かせるのは当たり前じゃ無い。」

「玉の輿に乗って浮かれていたビッチのどこに、被害者づら出来る権利があるとおもっているのですか?」

そろそろ耐えられなくなって来た。

2人に気がつかれないように、こそっと退出しようかと思った所に・・・

「ジョナサンいる〜??」

さっきまで耳に馴染んだ優しい女性の声がもう一つ店の出入り口の方から入ってきた。

「ローリアさん!?」

せめて、声を掛けてくれるなら1階でして欲しかった。

そしたら急いで降りて、ここと関わらない様に出来たのに。

今ここで3人が遭遇するするのは、何か不味い気がする・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る