潜む。

すみはし

第1話

心臓が音を立てて脈打つ。

この部屋には誰かいる。

私とあの人以外に。

2人暮らしのはずなのに。


彼女は毎日のように言う。

「また動いてる。何なのよ……」

私が使った後、元の場所に戻さないからだ。

彼女はきっちりしているから、きっとだらし無い私が嫌なのだろう。

最近ではもう怖がるほどに。

彼女には潔癖症なところがあるからなぁ。


彼女とは生活の時間の違いで、私が部屋に堂々といられる間は彼女は大学に行っている。

見るといえば彼女の寝顔くらいだ。

私はそんな生活でも幸せだった。

とても、とても。


けれど、おかしい。

ここ1週間ほど違和感がむくむくと湧き上がる。

私は彼女がいない間にも外出したりする。

その間に、物が動かされている気がするのだ。

誰か…ここに潜んでいるのか?

私と彼女の城に。


夜、彼女が寝静まった後。

私は日課のように彼女の寝顔を見に起き上がる。

彼女を起こさないよう、そっと。

するとカサリと何かが動く気配がした。

やはり、誰かいる。

ぱっと振り返って見れば、男がいた。


「誰だ」

私は言った。

「…お前こそ…」

相手はくぐもった声で答えた。

「先にお前が名乗れ。

場合によっては…どうなるか…

正直に言えよ。」

相手はしばらく黙り、口を開いた。

「彼女の…ストーカーだ…」

相手は彼女を指差し、答えた。

全く何てやつだ。

「一週間くらい前からだな…?」

違和感を感じだした頃。

「…そうだ…。

お前は…!?

彼女には彼氏がいるなんて聞いてないぞ!?」

ふぅ、3ヶ月ほど前からいると言うのに。

こいつの情報収集能力は…。

私はため息をつきながら落ち着いて答えた。


「君と同じだよ」

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