第20話 “地獄の中のパラダイス”のような“束の間のユートピア” (Rebecca Solnit)
“地獄の中のパラダイス”のような“束の間のユートピア” by レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit)
“地獄の中のパラダイス”のような“束の間のユートピア”
彼女の語る束の間のユートピアは、私が考えた事のある、人類が生き延びるための社会のモデルによく似ているのである。それを考察する為の方法として、複雑に巨大化した現代社会よりも、遥か太古の時代の我々の祖先の社会である「狩りをする裸のサルの群れ」の成立条件を探ることが、適切だと私は考えたのだ。
遥か何百万年の昔の太古の時代、遥かアフリカの大地に、それはあったのだ。まさしくそれは、“地獄の中のパラダイス”であった。その成立条件は一言で言える。【愛】そのものである。
屈強な狩人である夫たちが、狩りに出て何日も巣穴に帰らない間、生き延びるために妻たちは他の残った男たちとともに猛獣と闘い、夫たちの帰りを待っていたのだ。妻への愛と信頼が無ければ、夫は生命を賭して何日もかかる狩に出ることはできない。不倫も貞淑も法も倫理も起源は、その時代、その群れにある。勿論アフリカに孤立し散在する幾多の小さな社会が、愛を裏切り、その「自然法」も倫理も崩壊し、絶滅したのであろう。だが我々の祖先は絶滅することなく生き延びた。人類の歴史は醜悪悲惨であると同時に、闘いに勝ち生き延びた栄光の歴史でもあるのだ。
かの孔子が古の聖賢・聖人君子を熱く語ったのも宜なるかな。
レベッカさんは、日本の大震災のあとでも、“地獄の中のパラダイス”のような“束の間のユートピア” を見たと、感動して語られていた。
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