でとねーたーず!!vol.2
維 黎
紙とペンとドラゴンと追加で爆裂魔術
「
「へぇ」
【
「一般的な物は、羊皮紙に粉末状にした魔鉱石を混ぜ込んだ、特殊なインクで術式を書いたものなの。
「ふむふむ」
【
「初歩・初級の魔術なら普通の羊皮紙で良いんだけど、
「そうなんだ」
【
「あと
「奥が深いんだね」
【
「で、ここからが本題。
【
子供たちが遊ぶ
「ちょ、ちょっと、チェシカ!! 広範囲に威力のある魔術はダメだよ! 崩れたらどうすんのさ!!」
背に羽を生やした少年とも少女ともとれる中性的な小人が、パラパラと小石が落ちてきた様子に、目の前の少女に向かって慌てたように注意する。
「だってさー。私の説明を良いとこでイチイチ途切れさせるんだもん! 多少、イラッとして『世界をふっ飛ばしたいなぁ』って思っても仕方ないじゃない!!」
「仕方あるよ!!」
「えー!」
不服そうに頬を膨らます少女の名は"チェルシルリカ・フォン・デュターミリア"。親しい人たちからはチェシカと呼ばれる魔術師だ。
小人の方は、
ここはとある洞窟。
たまたま立ち寄った村で『一週間ほど前に、近くの洞窟に
この話を聞いたチェシカは、
「ど、
と、ヨダレを垂らさんばかりの表情で「詳しく聞かせて!!」とその場で叫んだ。
生物として最強の一角を
冒険者の誰もが、一度は"
そして
倒すのは非常に困難ではあるが、それを果たしたときの見返りは大きい。
村人たちから話を
で、表向きは
しばらく歩くと、広い空間に出た。
「ドラゴン♪ ドラゴン♪ どらどらごん♪」
その空間に、チェシカのご機嫌な歌が反響し、先へ続く洞窟に流れていく。
「ドラゴン♪ ドラゴン♪ どらごんごん♪」
「……ちょっと、チェシカ」
「ドラゴン♪ ドラゴン♪ どどんがごん♪」
「……チェシカってば!」
「ドラゴン♪ ドラ――」
「って、僕の話を聞いてよ、チェシカ! あと、その下手っぴーで音痴な歌もやめて!
ふわふわと後ろで飛んでいたヒュノルは、チェシカの前に回りこむと、その小さな体の手足をジタバタさせながら、抗議する。
「えー! せっかく楽しく歌ってたのにぃ」
「君が楽しくても、君の歌は
チェシカは「むー!」と唇を尖らせる。
と、その時、
「なんやねんなぁ、今の酷い騒音わぁ。ゆっくり寝てられへんやん」
洞窟の奥からそんな言葉が聞こえてきた。
チェシカとヒュノルは顔を見合わせる。二人の他にこの洞窟に向かった者がいるという話は訊いていない。
「誰か人間がいるなんて気づかなかった。こんな近くなのに気配がわからなかったなんて」
声のした方向を眺めながら、ヒュノルは首を傾げる。風に属する
「ちゃいまっせ。ワテは人間やあらしまへん。
ノシノシと足音を響かせながら姿を現したのは、一匹の竜種族風の何かだった。
大地を踏みしめるしっかりとした太い脚。ずんぐりむっくりな胴体。そこから伸びる長い首。
パッと見は、
まず鱗に覆われていないこと。その肌はプルプルというか、モチモチというか、弾力性が感じられる。
次に人語を介していること。
人間の言葉に限らず、エルフ語やドワーフ語などを話す知性の高い
翼竜は別にして、翼が無く飛行出来ないものは
「これ、ホントに
「うーん。僕もこんな種のやつ、訊いた事もないなぁ」
「こう見えてもれっきとした
「えっ! ホントにアンタ
元来、
もし、この保護指定品を不当に採取、扱いをすれば最悪、国際指名手配を受けかねないほどの重要案件である。
「
思わずポロリと本音が洩れるチェシカ。
そう。いくら法的な保護がされていようと、不当に採取する者がいなくなるわけではない。
「実はワテ、"戻らずの森"に棲んどる
えへへへっ♪ と照れくさそうに笑う
「――なによ、その人間臭さは。竜が卒業旅行ってなに? 魔道学院の女子生徒じゃあるまいし。それに
チェシカはよくわからない脱力感に包まれていた。
「
ヒュノルもしみじみと見上げながら「種族性ならヤダな」とこぼす。
パンパン、という音共に「うっし!」とチェシカが気合いを入れなおす。
「まぁ、とにかく、無事脱皮は終わったの? だったら、良ければその脱皮した皮を貰って帰りたいんだけど?」
「えー、もって帰るんかいなぁ? なんかちょっとなぁ。綺麗なモンちゃうし、こう、恥ずかしいやん?」
「ええやんか。アンタには必要ないもんやろ? それに人間にとっては、綺麗やし、ごっつー価値のあるもんなんやで?」
ワザとなのかつられたのか、チェシカの言葉もずいぶんと
「――チェシカ、なんでそんな口調になってんの?」
「別に、単なるノリよノリ。――それじゃ、こうしましょう。もし脱皮した皮をくれたら、私たちが"戻らずの森"の入り口まで護衛してあげる。アンタ、悪い人間に見つかったら、問答無用で狩られるわよ。っていうか、よくここまで無事だったわね」
⚚
チェシカたちはかなりの金額を手に入れることができ、それを元手に竜皮紙と竜牙の筆を購入した。
「ヒュノル、
「辺りに人の気配はないよ」
「よしよし。では、実験を始めましょう!!」
「でも、チェシカ。
「一応、昔に
そう言うと竜皮紙に竜牙の筆を使って、術式を書き込んでいく。
「それじゃぁ、いくわよぉぉぉ! 【
「【
そもそも、攻撃系
当たり前のことだが、
結論。
チェシカの
余談だが、この日を境に"戻らずの森"近くにある街で、街中をうろつく包帯人間の噂が広まっていた。
――了――
でとねーたーず!!vol.2 維 黎 @yuirei
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