転生相手は復讐者(仮題)

ジョセフィーヌ

プロローグ

第1話

俺は如月翔キサラギ ショウ、19歳の大学生だ。そんな事はどうでも良い、ここは何処だ?


「そなた、もう一度生きてみたくはないかの?」


俺は真っ暗な部屋に立っていて、正面には全身白いローブを着た、白い髭を伸ばした爺さんが立っている。俺が視線を左右に動かしても正面には爺さんがいる。よく分からん。


「もう一度聞こう。そなた、生き返りたくはないかの?」


で?生き返る?さっきからどういう事だ?


「そなたはもう死んでおる。覚えてなければ見せてあげるかのう……」


爺さんが左手を振ると、テレビ画面の様なものが現れた。その中には電柱に当たって壊れた車と、

「!?……おいジジイ、これどういう事だ!!」

ひしゃげた自転車と路上に倒れた俺の姿があった。ポケットに入れていたはずのあのスマホも、倒れているのが俺だという事実を突きつけてくる。


「そなたは事故で死んだのじゃ。石を踏んでバランスを崩した所に車が来た様じゃのう」


俺の怒りも受け流しながら訥々と語るジジイ……そうだ、いつものように自転車を漕いでいたら何かを踏んだんだ。そしてハンドルを取られて………


「思い出した様じゃのう」


俺の思考を読んだ様に爺さんが話しかけてくる。少しは落ち着いたし、さっきから言っている話位は聞いてやろう。


「で?何で生き返らせるとか言ったんだ?」


この爺さんが何者なのかは判らない。ただ、そうなのかと思わせる説得力がある。だからこんな与太話も聞いていられる。


「ちょうど力を欲しがっとる者が居てのう。その者の肉体で生まれ変わってみんか?という爺の気まぐれじゃ。ちなみにその身体の持ち主から肉体の優先権は貰っておるぞ?」


なるほど、俺の精神がその肉体に入るってことか?ただ言い回しがちょっと気になるな


「なぁ?今のを聞く限りだと、相手の精神も生きてるって思えるんだが、それは大丈夫なのか?」


「よっぽどの事がない限り受け入れると言質は取っておるよ。あと、その者はこの世界の出身ではない。つまりは異世界への転生になる」


爺さんはそう前置きして幾つか語ってくれた。

一つ、その世界の言語の通訳能力をくれる事

二つ、それ以外にも幾つか特殊な能力をくれる事

三つ、転生後も俺自身の意識は残る事

何というか、至れり尽くせりな気がする。


「そんな所じゃ。さてどうするかの?生き返らないのであれば、輪廻の輪に戻してやるが……」


爺さんが聞いてくるが、話を聞いた時点で俺の気持ちは決まっていた。


「頼む。もう一回生きられるなら、なんだってやってやるさ」


そもそも死んだ身なら失う物は何もない。それなら異世界だろうが何処だろうが行ってやる。


「決まった様じゃの。じゃあ送ってやろう」


爺さんがブツブツと呟くと、俺の意識が霞みがかっていく。ただ、最後の爺さんの言葉が妙に心に残った。


「そうじゃ、伝え忘れておったわ。その女子おなごの果たすべき使命を果たす意思が見られなければ、お主は地獄にすら行けんからの」


…………俺、ちょっと騙されたかもしれない。




次に俺が目覚めた時、それが俺の新しい生活の始まりだった。

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