第5話 カタカナ語の使用について

 現実世界ではない別世界を舞台にした物語を作る際に、登場人物の台詞および語りとしての地の文に於いて、使用する言葉に制限を加えるか否か(どのような語彙を使用するか)については、判断に迷うところだと思います。「別世界の物語を、日本語を使用して語る」という、物語の存在そのものに内在するであろう根本的な問題はさておき、作ろうとする世界を記述するに相応しい言葉を選ぶのには苦労します。私の場合は、カタカナ語をどこまで使用するか、という問題に直面しました。


 別世界であろうと、そこで暮らす住人がどのような暮らしをしているかを考えていくと、食べて、寝て、働いて、ということをしているであろうことは思いつきます。それらを描いていく際に、カタカナ語を使用してもよいのだろうか、使用するとしたらどこまで使用してもよいのだろうか、ということを考えていったところ、基準を設けることは困難であるということに辿り着きました。それならば、「基準を設けるのが困難ならば、カタカナ語を使用しなければよい」、と開き直り、自作の中ではカタカナ語を使用しないことにしました。例外として、登場人物の名前、動植物の名前、町の名前、などについては、カタカナ語を使用してもよいこととしました。


 カタカナ語の使用に制限をかけた結果、いろいろと困難に直面しました。まずは、服装の描写が困難になりました。日頃何気なく使用している「シャツ」や「ズボン」といった名前に対する日本語(和語、漢語)を見つけられなかったため、これらの言葉を使用する描写ができませんでした。食事に関しても、「ナイフ」や「フォーク」といった言葉に対する日本語を見つけられませんでした。「スプーン」は「匙」に言い換えることで解決しました。「コップ」については「杯」を使用しましたが、少々無理があった気がします。以下、使えずに苦労した言葉の中で、主なものになります。

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【衣】

フード、マント、シャツ、ズボン、ベルト、ブーツ、ドレス、スカート、等。


【食】

ナイフ、フォーク、スプーン、コップ、パン、バター、フルーツ、等。


【住】

テーブル、ソファ、ベッド、シーツ、ランプ、ドア、等。


【その他】

ペン、インク、ノート、ページ、テスト、バッグ、コイン、アーチ、等。

――――――――


 カタカナ語の使用に制限をかけましたが、「カタカナ語の使用に制限をかけたとしても、物語を作れなくなるわけではない」、という結論を得ることができましたので、これはこれでよかったと思っています。ただ、カタカナ語の使用頻度について、作品を読まれたかたにどこまで伝わっているかは未知数ではありますが。



    ◇



2020/04/26 追記:

2020/06/20 修正:


言い換えの例:

※ただし、意味的には、厳密に一対一ではありません。


フード:頭巾

マント:外套

ブーツ:編上靴


スプーン:匙

コップ:杯

パン:麺麭

バターやチーズなど:乳酪

フルーツ:果物


テーブル:卓

ベッド:寝台

シーツ:敷布

ドア:扉


ペン:筆記具

ノート:帳面

ページ:頁

テスト:試問

バッグ:鞄

リュックサック:背嚢、雑嚢

コイン:硬貨

アーチ:迫持

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