ペレットポイカ

エリー.ファー

ペレットポイカ

 紙とペンがある。

 だから、何だという話なのかもしれないけれど、ここには紙とペンがある。

 ペンは元々、紙のことを嫌っていたし、ペンもまた紙のことを嫌っていた。あいつは汚すし、あいつは汚されると怒るし、というような感じで、思いは平行線。周りで見守る文房具たちは、おそらくこの二つが和解すること、楽しく生きていくことは難しいと感じていた。

 実際、前にもこういうことは何度かあった。ただ、その時はいつもコピー機と紙や、絵の具と紙というように、大体が紙主体となった争いだった。

 ペンはほぼ巻き込まれたという事になる。

 神様はそれを見ていて、怒ってとりあえず世界から紙を全滅させた。

 一瞬だった。

 困ったのはペンも含めた他の文房具たちだ。

 皆は口をそろえて言う。

「神様、それはやりすぎ。」

「だって、加減とか超むずいんじゃもん。」

「分かるけど、ダメダメ。」

「うっわぁ、こっち側に回ってみたことないくせに、うっざ。」

 そんなことを言うので、神様の仕事を修正液が一日肩代わりすることになった。割と顔の広いタイプの文房具だった修正液は、前にも一日署長や、大学のミスターコンテストで銀賞を取ることもあった。

 修正液はさっそく紙たちを少しだけ戻して、自分の周りに集めると、言い分を聞くことにする。

「世界で一番偉い文房具は、僕たち紙だよ。修正液なんて、紙にペンが文字を書いて、その上でようやく使われるようになる代物だろ。三次産業の万年補欠野郎が、神様になった程度でえばり腐るな、分をわきまえろこのお荷物。」

 紙は全滅した。

 他の文房具たちは、皆口をそろえて言う。

「言ってること、結構、当たってたよ。」

「でも、あの発言にはマジでモラルとかなかったよ。」

「ミスターコンテストの後、調子に乗って芸能活動始めたくせに、ぱっとしないお前が悪い。」

「酷い言われよう。」

 修正液は意外と心が繊細で、そういう簡単な言葉で心が折れた。

 次に神様になると言い出したのは、長めの定規だ。

 長めの定規は、テレビと棚の隙間や封筒に入った書類をいっぱい入れている所にいつも収まっていた。正直な話、華がないし、神様になると言ったとき、そういうことじゃないよ、と皆が思ったが、口をつぐんだ。

 定規というと、やはり無駄に長い歴史があるので、軽々に馬鹿にはできないのだ。

 けれど、子供たちの筆箱に入れるほどの手軽さは全くない、長めの定規である。

「僕は、ここで宣言したい。文房具同士が手と手を取り合って生きていくことができれば、ペンも紙も、そのほかの文房具も幸せになると。そして文房具全員のための平和な世界を生み出すことができると。」

 ペンが自分のキャップを外す。

 地面に何か文字を書いていく。

「うむ、何かな。素晴らしい政策や意見ならどんどん取り入れていこうじゃないか。そうだろう。、なぁ、みんなっ。」

 文字が書き終わる。

 

 陰キャのくせに、しゃしゃるなバカ。


 こうしてペンと紙は消えてなくなり、長い定規の独裁が始まる。

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