だんじょんぶ!

赤里キツネ

第1話 踏み出した一歩

ダンジョンダイバーズ、というゲームを知っているだろうか?

それは最高のゲームであり、人生そのものと言っても過言では無い。

遥かな高み、至高の存在・・・


「くらえっ!」


ザンッ


俺が放った剣撃は、目の前の醜悪な小男・・・ゴブリンの防御を掻い潜り・・・

手に、皮の鎧を切り裂く感触が伝わってくる。

続いて、肉を裂く感触・・・


ギィアアアアアアア


ゴブリンの悲鳴。

血飛沫・・・錆びた鉄の臭い・・・


「まだまだ!」


ザンッザンッ


続けて、連撃・・・


生暖かい返り血・・・そして・・・


倒れるゴブリン。


ごとり


ゴブリンが消え、地面に巨大なフルプレートが落ちる。

ヘルム、鎧、籠手、具足がセットとなった鎧だ。


「やった・・・勝った・・・」


俺は、興奮を抑えられず、言葉を漏らす。


「お疲れ様っす、せ~んぱい」


にひひっ、と、笑顔を浮かべながら、後輩が労ってくる。


血飛沫は、アイテムドロップと同時に消えている。


数世代先を行く、超リアルなVRゲーム。


ダンジョンダイバーズ・・・通称、DDS。

人生を賭けた願い・・・俺は・・・此処に・・・いる!


--


DDS。


数世代進んだ、完全没入型VRゲーム。

テレビ中継を見る度、俺は奇声を発した。


だが、神は、この世を不平等に造り給うた。


地域格差。


そう。


DDSは、東京、大阪、京都の一部でしかできないのだ。

正確には、隣接県でもできたり、同都府でもできなかったりするのだが。


オープンβテストが終われば、正式サービスが始まり、全国解放される・・・そう言われ続けてはや数年。

オープンβテストは5次に達し、βテスト期間にも関わらず全国大会が開催される謎の状況。

無論、東京、大阪、京都以外からの参加者はほぼ皆無。


痺れを切らした者は、DDSの為だけに引越しをする者も。


そう、俺の様に。


家族を上手く丸め込む工作を続ける事数年。

遂に、大阪の高校に編入する事ができた。

親戚の家にお世話になるので、高校の選択肢は無かったが・・・


夢を諦め、日々を怠惰に待つ者どもよ。

俺は違う。

俺は勝ち取ったのだ。


人生における、至上の体験を味わう権利を。

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