二章 『日常と魔法の交差』
二章 1 『目覚ましどおり!』
二章 1 『目覚ましどおり!』
起きてぇ……ねぇ起きて……起きないとあんなことやこんなことしちゃーー
ピッ!
鳴っていた目覚ましを、眠たさが残る体でなんとか消す。
今日は何とか、目覚まし通りに起きれたようだ。
しかし、目覚めはあまり良くない。昨日の事が気になりすぎて、なのかは分からないが、数回目が覚めてしまった。
夢も見たような、見ていないようなレベルの記憶しかないが、確実に五度寝以上はしたと思う。
この調子じゃ、今日のテストもいまいちになってしまいそうな気がする。けして勉強してないからとかじゃなく。
両親は共働きで朝は早い。なのでほぼ毎日の事だが、朝ごはんはオレが妹と自分の分を用意する。
が、なんてたって今日は土曜日。妹は、というか学生は、普通なら休みなのだ。なので自分の分だけ用意する。
今日の朝はいつもより少し余裕を持って起きた。理由としてはテストの朝……なんて訳ではなく、ホットサンドと紅茶で優雅に過ごし、少しでも気分をリフレッシュする作戦だ。
こう見えても料理は好きな方だ。得意かどうかは別としてね。
朝の支度を先にある程度済ませる。それではレッツクッキング!
具材はシンプルにハムとチーズ。そして調味料は塩コショウのみで作る。
食パン八枚切りを二枚使い、その間にハムとちょっと多めのチーズを挟み、塩コショウを少々振りかける。そして挟んだままホットサンドメーカーでサンド!
焼けるの待つ間にお湯を沸かし、皿にはサラダ菜を数枚あしらう。
カップにインスタント紅茶を入れ、お湯を注ぎホットサンドの焼き色を確認する。……とてつもなくいい感じだ。
取り出して半分にカットし、サラダ菜をひいた皿に盛り付ける。ヤバい少しチーズを入れすぎたか。予想以上に溢れてきている。
準備は万端!
「いただきます!」
椅子に座り、その今にも溢れてきているチーズごと、ホットサンドを口に運び食らう。
「あ〜、あったかいハムとチーズ、そしてカリッフワッのパンがたまりませんわ〜」
ひとときの幸せを噛みしめる。
思わず出てしまう独り言を言いながら、この優越な時間に浸る。あぁ……幸せだなぁ。
昨日の事なんか忘れてしまいそうな……しまった、思い出してしまった。せっかく少しの間忘れかけていたのに。
まあ晴香に合う時点で、思い出すのは確定だが。
時計を見ると、八時手前になっている。もうそろそろお呼びの声が、玄関の方から聞こえる頃だろう。
「咲都〜寝てるの〜? また遅刻なの〜? 先に行くわよー」
「はいはーい、今出ますよ」
ほらね。晴香さんのお呼び出しですわ。
靴を履き、玄関を出て晴香と合流し、いつもの通学路をいつも通り歩く。
「あーあ、土曜日に学校なんてだるいなー。普段なら休みなのにテストはこれだからな〜。そこんとこどう思いますか晴香さん?」
「仕方ないでしょテストなんだから。で、勉強は?」
「しているとお思いで?」
「はぁ……確かに聞いた私が間違いだったわ」
昨日の鉄矢に続き晴香まで……失礼な。する時はしますよオレは。やればできる子、そう大人にはよく言われている。
しかし昨日の事で、寝るに寝れなかったのに勉強、なんて気分にオレはなれない。
昨日の事が夢ならどんだけよかったか……。
また今日遅刻してもいいから、夢であってほしかった。
「昨日の事……夢なんかじゃないからね。まだ何も分からないと思うけど覚悟はしておいてね。そして気をつけてよ」
夢だったら、と思ったそばから否定してきやがった。どうして春香には思った事を、こうも簡単に当てられるのか……。
ほんと何も分からないのに覚悟、とか気をつけて、とか言われてもねぇ……。
これでオレも異世界に関係したヤツ、らの仲間入りなのか。嫌だなー。
そのまま二人でいつもの通学路を学校に向かう。
喋りながら歩いていると、昨日の異世界事件があった寺の境内まで来ていた。
「おぉ咲都くんに春香さん、二人ともおはようございます。咲都くん今日は遅刻じゃないんだね」
「内藤さんおはようございます」
「おはようございます。今日は何とか起きれたました」
内藤さんってのは掃除のおじさんの名前ね。ちなみにオレらの名前は二人の会話から覚えてくれたらしい。
「内藤さん昨日ね昼前になんか変な事起こったりしませんでした?」
「? 分からないけどなにかあったのかい?」
「あっ、内藤さんこっちの話です〜。ほら、行くわよ咲都」
せかす晴香に会話を途中で切られた。
「じゃ今日も学校頑張ってね」
「「はーい」」
そして少し歩き、内藤さんが見えなくなったぐらいで、
ギュゥゥゥゥ!!!
「痛ぇ! 何すんだよ!」
なぜか二の腕をつねられた。
「何するはこっちのセリフよ! 昨日も言ったけど普通の人には関係ないし分からない世界の事なんだからむやみやたらに異世界の話をしちゃダメなの。それに話したことでもしなにかあっても責任取れないでしょ」
なるほど。異世界の話は普通の人にはしちゃダメなのか。学校に着いたら鉄矢に話してやろうと思ってたのにな。
そういうことは先に言っといてくれればいいのに。
ーーそして昨日の時間停止にあった付近、南門の近くまでやって来た。
少し固唾を飲み門をくぐる……特に何か起こる気配も無いようだ。
「ヤバ、もうこんな時間じゃない! ちょっとゆっくり歩きすぎたわ。咲都急ぐわよ」
腕時計の針は八時十五分になりかけている。
昨日の今日でまた遅刻、とかさすがに洒落にならんし、もし遅刻したら先生に何を言われるか。たまったものじゃない。
昨日と同じく走りながら階段を下り細い道を抜け大通りに。目の前にある学校に急いだ。
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