一章 エピローグ 『半信半疑の闇夜』
一章 エピローグ 『半信半疑の闇夜』
晴香と瞳姉による異世界とやら、アーウェルサ説明会の解散から数時間が経過し、時刻は午後八時を回っていた。
今は晩ごはんを食べ終え、少しゆったりとした時を過ごしている。
「すげぇ。まさか七話からこんなどんでん返しになるなんて……このアニメ面白すぎだろ! しかもこんなとこでっ……ハッハッハッ」
「ちょっと咲都!」
ヤベ、ちょっと笑いすぎたか。窓の外から晴香の声が聞こえる。
「何ですか……」
「何ですかじゃないわよ! 窓開けて声出して笑ってんのはどこの誰? うるさいのよ。今はテスト週間で私は勉強してるの!」
「すいませんでした。てか窓越しに呼ぶなって晴香が言ってたのに何で?」
そう、オレの部屋は二階にあり、晴香の部屋も二階にある。そして家が隣で部屋も人一人〜二人通れるぐらい間が空いて、すぐ隣同士に位置している。
そして窓があるのも同じ位置。これ隣と仲悪かったらヤバい位置関係じゃねとか思う。
で、晴香は近所迷惑だから窓越しに呼ぶなっていつも言ってるんだが……
「窓開けっぱなしでうるさいからよ! てかいい加減勉強しなさいよ……留年しても知らないわよ」
「そのうちするよそのうち。今は休憩中なんだよ。留年しそうになったら……てかならないように多少は頑張るし」
確かにそろそろ勉強してもいいかなぁ。自分でも何でかわからないが、勉強が好きではない。趣味に関する勉強なら大好きなんだけどな……。
「じゃ、続きするから静かにしてね。おやすみ」
「おう。おやすみなせぇ。パンイチとかで寝るなよ。風邪ひくぞ」
「あんた叩きのめすわよ」
ピシャッ!
ああ怖い怖い。てか今気づいたが晴香は風呂入ってパジャマ姿だったな。しかも風呂から上がってあまり時間が経っていなかったのか、少し火照った感じだった……。クソッ、もう少しマジマジ見とけば良かった。
今日は溜まっていたアニメ観賞はここまでにしておいて机に向かう。
もちろん勉強ーーをする訳ではなく大好きなん趣味、サバイバルゲームで使うエアガンをいじる。
ふと集中が切れた時に昼間の事を思い出した。忘れていた訳ではないが意識しないようには少ししていたようだ。
未だにあのこと、あんなことが現実だったなんて違和感ありまくりだ。正直まだ信じたくないって気持ちが大きい。
誤解がないように改めて言っておくがオレの欲しいものは平和な日常だ。悪魔で非現実は妄想だから好きだった訳で……。
色々考えながら作業をしていたら時間が過ぎていたようだ。時計の針はすでに九時半を指している。
ほんと、考え事といい妄想といい、何かを思案していると時間があっという間にに過ぎている。風呂に入り歯を磨き準備は万端。そろそろ寝よう。
布団に入り携帯をいじりながら結局勉強してねぇな、なんて思いはした。
なんせ今日は色々あった。色々ありすぎてかなり精神的に疲れてしまった。
電気を消して寝る体制に入る。
なんだかんだで明日もテストがある。明日こそ遅刻しないように、早く寝て備えることが重要だ。けして勉強をしない理由付けではないよ。
沈み込んでいく意識。こうなってきたらもうそろそろ寝るだろう。
こうして一日が終わり、明日に続く夢という世界に取り込まれていく。
ーー心の奥なのか身体なのか、何かが外れたような。その瞬間、思考が暗く漆黒に染まっていく。
圧倒的な闇。しかし自分は苦しい訳でも、痛い訳でもない。単純な闇に苛まれているだけだった。
何も聞こえない。闇のせいなのだろうか。あの空間とかいうのに巻き込まれた時に似ているような……。
「おい咲都!」
「咲都くん!」
「晴香は大丈夫だから! 咲都それ以上はダメ!」
そんな感じの言葉だっただろうか。もはや言葉と言うより音で判断できるような感覚。そのぐらいの強さでしか聞こえなかった誰かの思い。それさえも漆黒のなかに消えていって……
ーー目を覚ますと辺りはまだ真っ暗だった。
「……眠た」
夢の如く辺りを支配している闇を視界に入れ、すぐさま二度目の眠りについた彼、虹夜咲都の記憶に先程まで見ていた夢はほとんど残らない。
少し開いている窓から風が入り、彼の頬を撫でる。
今彼が見た夢は何十、何百もの昼と夜が繰り返された時、ふと蘇るのだが、再び眠りについた彼はそんなこと知る由もなかった。
ーーこうして虹夜咲都の異世界との繋がりが始まった一日の夜は更けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます