第218話 暗躍する役人と領主
「貴方が無能な様子ですので、他の領から応援を呼んで来ました、最低限、この領地の領主である役目は果たして頂きたい」
現在地はこの地における領主の館、華美に飾られた貴賓室で、領主に対して言い放つ。
呆れ返り、歯に衣着せずに領主を炊き付ける。
現場を下見した際には、確りと歯に衣を着せて美辞麗句を並べ立て察しろと言う程度の物言いにしておいたのだが、どうやら理解出来ていない様子だ。
「平民が幾ら死のうと我々には関係は無いのでは?」
そんな的外れな事を言って居る、流石は累代貴族、特権意識ばかりが肥大化して最終的に領地と領民を食いつぶすまで恐らく改心する事は無い。
寧ろ今まさに、現在進行形で領民が病に倒れて居る訳だが、例えばこの段階で「今流行病で領民が大変だから恥を忍んで申します、納税を待ってもらいたい」等の領民の事を考えた発言や、実働として、現在この流行病の最前線として働いている教会への資金援助なり人手の派遣なりの方法はあったのだが、其れをする様子は一切無い。
平民の働きが無いと毎日の小麦すら手に入らないと言う事を知らない、そんなうつけだ。
既にこの領地に居る農民の半分以上が流行病、黒皮病に倒れている、収穫期だと言うのに収穫されている麦畑の方が少数派だ、収穫すらおぼつかない状態では、下手すれば其のまま畑で腐ってしまう。
それに伴って下がる税収の事も考えていない、減った分を増税して毟り取れば問題無いと思って居る様だが、既にこの領地の税率は4割だ、国に治める分は1割なのだが、残りの3割は何処に収めて居るのか、其処等は領地の自治権として認めてはいるが、余りにも阿漕だと流石に此方としても介入しない訳にいかない。
「では、この病を収める為、何かしらの貢献をしなかった場合、国王からの覚えが悪くなると言う事を伝えておきましょう」
平たく言うと、御取り潰しを視野に入れると言う意味だ。
「な?!」
「そんな?!」
「横暴だ?!」
口々に抗議の声が上がる。
因みに最低ラインは先に述べた様に、税率の引き下げや、教会への資金援助か人手の派遣などだが、其れが最低限にして最大限だ、素人が現場に口出ししても碌な事に成らない。
だが、恐らくこの豚達には判らない事だろう。
さて、こいつ等はどう動くか?
其れを見て、この馬鹿たちの処遇を決めようと思う。
・・・・・思ったよりもこの領主の一族は頭が悪かった様だ。
私兵と言うか荒くれを雇い、私が泊っている事に成って居る宿と教会を放火して、全て無かった事にしようと動き出した。
「何とも、此処迄頭が悪いとは・・・・」
思わず呆れかえって呟く、報告する私が居なければ問題は存在しない、病人が全て死んで居無くなれば病など存在しない、そんな勝手な理屈で動いて居る様だ。
所で、私の爵位は名目だけとはいえ侯爵でな? 貴様ら子爵程度があれこれして無事に済む身分では無いぞ?
うむ、この類なら言い訳も何も在りはしない、手加減も何もせずに叩き潰してしまおう。
むしろ御取り潰し所か、根切り段階だな?
少し数が多いから、私の側も私兵を使うとしよう。
さあ、行って来い。
さあて、結構な人数が居なくなってしまった。
しかし、この地の領主が居ないと言うのは問題だな?
そして丁度爵位だけ男爵の、領地を持って居ない人材が居たな?
下手に累代だけしたうつけ物よりは、成り上がりでも優秀な人材を使いたい所だな?
劇薬では有りそうだが、まあ良いか?
そんな訳で、この病の騒ぎが一段落した後に、この地の領主業をあ奴等に押しつけられるように根回しを始めるとしようか?
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