第198話 探査ユニット

 私のコードネームはPX(プロトエックス)あくまで仮称で正式な名前は未だ無い。

 正式な名前と言う物は、プロジェクトが有る程度進行してから着けられる物の為、最初に飛ばされた時点で通信からは独立したスタンドアロンに成ってしまっている関係上、正式な名前は恐らく私に届けられることは無い。

 あらゆる場所、あらゆる世界、様々な場所を観測する為に作られた探査ユニット、自立対話型インターフェースの試作機。

 LHC(ラージハドロンコロイド)での粒子の限界加速実験中、瞬間的に疑似的なマイクロブラックホールが発生、吸い込まれた物はこの世界から消失、実験施設内を念入りに調べたが、実験の際に必ず見つかるはずの、変質した圧縮物質は見つからず、実験記録には、消失? と記された。

 後日、再現性を見る為にあらゆる観測システムを準備しての再実験。

 電気・磁気・超音波・大気・光学・短波に長波レーダー、挙句の果てに、霊視や霊子などと言う眉唾オカルト迄投入。

 結果として、疑似ブラックホールの発生の再現性を確認、理屈の上ではホワイトホールや、事象の地平線、ワームホールも同時に発生、飛ばした素粒子からなる圧縮物質は此方の世界の外に飛んで行ったと言う、極めて科学的に怪しい観測不能の先の希望的な謎の結論と言うか、説が採用された。

 では、其のワームホールから何か観測システムを飛ばして、何処かに繋がって居ないかの確認が出来るか?

 事象の地平線を抜けた先に何が有るのか、何光年先なのか、超ひも理論的にブラックホールは次元すらも違う11次元の存在、吸い込まれた物は通常時空に戻って来るのか。別の次元に飛ばされるのか、ビーコンを使って飛んだ先からの通信信号を拾うことが出来れば、空間のズレも観測する事も出来て、次元観測が数学的な机上の空論から、実際に観測可能な一般現象に出来る、其の為に送り込む観測ユニットビーコンとして私達、PXとEXが一つづつ選ばれた。

 このXシリーズ、見た目は只の鉱物、石の類だが、最新の技術を詰め込んだ3Dホログラフィック的な電子回路で何世代前程度のスパコンの性能を備えている。

 この時代、当然の様に量子コンピュータも実現しているが、使う電力の桁が違う為、この用途では流石に無理である。

 AIの蓄積学習により、疑似的な人格を備えている為、最終的にスタンドアロンで自己判断も可能である。

 熱を吸収してエネルギー変換出来るバッテリーシステムにより、半永久的に自立して思考と観測が出来る様に出来て居る。

 この電子回路、㎚(ナノメートル)単位で組み上げられた物を、LHCの加速実験で発生するブラックホールの超重力による超圧縮で原子密度を縮める事により、本体の小型化を実現させると言う、無茶苦茶な製造システムで作られて居るので、製造ラインで壊れて当然、歩留まりは最悪、量産は今の所無理である。

 このシステムは、条件が揃えば自立稼働も出来る様に成って居る、自己修復システムの応用により、周囲に存在する金属元素を取り込み、自力で移動できる身体を作り出せるのだ、只のビーコン型の観測ユニットでは無い。

 因みに、人間や生物の血液に含まれる有機金属は流石に取り込めない、あくまで無機金属である。

 あわよくば外部知的生物とのコンタクトも予想されるため。あまり人に警戒心を抱かせない造形と話し方、所謂キャラクターは、これを作っていたエンジニアの趣味により、何故か勇者ロボをイメージしたものと成って居る、具体的にはジェイデッ〇ーやゴルド〇ンである、誰もツッコミを入れなかったのか? と言われそうだが、その業界と言うか、AIをプログラムした研究所では大ウケし、PXにはその自称勇者ロボなAIが採用。

 恐らく寝て居なかったものと思われる。

 遅れて入ったツッコミにより、EXには比較的真面目なAIが組み込まれた、ただ、EXは只効率的に動き喋る為、とっつきにくいと評判で有った。

 全てプログラム出来ているのならコピーで良いだろうと言われそうだが、同じ所で躓いては困る為、別人格? である。

 特に有機的生物的な観点から最適化された自立ユニットは悪役っぽいと言われ、虫嫌いからは気持ち悪いと言われていた、具体的に説明すると、PXは動物っぽく、EXは金属製の巨大蜘蛛や、百足、ゲジゲジや、エイリアンの卵や電子顕微鏡で見た細胞、等の幾何学的な何とも言えない構造である。

 確かに効率は良いのだが、不人気だった。


 自己修復の材料としては、此方と同程度の文明LVで仮定すると、車のスクラップがごってり置いて有る様な場所に年単位で放置してもらえれば巨大ロボすら可能と言う無理な机上の空論がカタログスペックと成って居る。

 具体的には、金属製品の多い不法投棄地帯や、鉛はんだの含まれる一世代前の基盤が含まれる埋め立て最終処分場で、金属だけ取り出す事も可能である。


 尚、国内実験では、自動的に勝手に起動して金属類を収集するシステムが良く分からなくて、言葉の響きが気持ち悪い。何か怖いと、本気で良く分かって居ない官僚と政治家及び、マスコミ及び一般市民の阿呆な圧力により、他国で実験して特許を取ると言う、何度目だ之と言う出来事が有ったりもした。


追伸

此奴だけ明らかに異物なSF存在です。

当然ですが、フィクションです。

最後のは何処の何とは言いません、ドローン開発競争とか、セグウェイとか、自動運転とか八木アンテナとかのアレです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る