第174話 灯の内職(タイトル回収と言う奴です)

「この時はこんな感じでしたね?」

 読ませた皆に意見と感想を求める。

「大体合ってますけど、私としてはもうちょっと格好良く」

 エリスちゃんが更に和尚さんの格好良さを盛れと要求する、これ以上やると謎の決めポーズで「喝!」とか「怨!」とか言って戦闘を終わらせたり、高い所で見得(みえ)を切ったりしかねないので流石に無いわーと自主的にボツにした。

「段々と、盛り過ぎてません?」

 既に謎のイケメン坊主に成って居る、少なくとも私達の和尚さんは優しくて紳士的で? イケメンの類では無く、若干弱気で普通の3枚目だ、流れで一緒に居るが、一目惚れされるような人材では無いだろう。いや、其処が良いのだが・・・

「元から現実感無いけど、誰も信じないと思うわよ?」

 アカデさんが素直な感想を飛ばす。

「まるっきり、酒場で冒険者が酒飲んで話す法螺話の類に成ってますよね・・・・」

 そんな自覚はある。

「私と合う前からこんな危ないことしてたんですね・・・・」

 クリスちゃんがしみじみと驚いた様子の感想を漏らす。

「凄いでしょう? 大体実話なのが笑い所」

 笑えるだろうか? 此方の世界の笑いのツボとNGラインが未だ良く解らないので、こうして皆に読んで貰って手直しするのだ。


 今は昼下がり、おやつの時間、冒険が休みの時はこうして皆で揃って、家の中庭でテーブルに集まって、お茶を飲みながら色々と話したりするのがお約束に成って居る、中々優雅で、お気に入りの時間だ。

 今日は、暫く書き溜めた小説を出版しようと、皆に読ませて改修点を洗い出して見ようと、お茶会に持ち込んだのだ。

「面白いんだが・・・恥ずかしいのが先に成るな・・・・」

 和尚さんがぐったりした様子で突っ伏した。

 耳まで真っ赤だ、衆人環視の元での指輪交換やら、ネックレス装着やら、色々やらかして散々恥ずかしい目には有って居るのだが、コレは更に恥ずかしいらしい。

 平たく言うと、ウチの旦那がやたらと強い上に優しくて最高ですと、オープンで惚気て居る様な物だ。

 本人に読ませた私自身もかなり恥ずかしい。

「まあ、美化200%ぐらいですけど、大体実話ですから」

 創作と言う物は基本自分を切り売りする様な物だから、先ずは自爆的な羞恥プレイに対する開き直りが大事だ、既に自分自身は開き直って居る。

  因みに、次に大事なのは作った物に対しての批評を気にしすぎない事や、売れなくても泣かない事、初めてのサークル参加で売れなかった時は悲しかったが、次に切り替える事、等々・・・

「自分の行動を後から読み直すのは結構きついぞ」

 そんなボヤキが聞こえる、初期のこの人は、私達に好かれたのが嬉しくて割と変な言動と行動が目立つ、若気の至りを暫く経って落ち着いてから人に発掘されるようなものだ、黒歴史と言っても良い、物書きを嫁に持った以上は多分皆通過する儀式だと思うので諦めて下さい。

 今回私が持ち込んだ物語は、私がこの世界に来る前、和尚さんに初めて出会って別れ、この世界で再会して、色々何やかんやあって、助けられたり、教わったり、襲われたり、ゴブリンに襲われて居たエリスちゃんを助けたりと、その他色々、平たく言うと、私達の自伝だ、当然誰が元ネタかは知り合い以外には分からないように、色々と濁して盛って消して、程良く読み易い様に時系列を入れ替えた、この世界は情報化社会では無いので、顔バレは無いだろう、噂話は井戸端会議から隣町にでも飛び火するらしいが、隣町に何て行った事無いですし。

「しっかし、こうしてみると、ネタはてんこ盛りだな・・・」

 和尚さんが色々諦めた様子でボヤく。

「そう言う訳です、これだけ突っ込み所とネタの多い人生送って来たんです、書かなきゃ勿体無いです」

 向こうでは、他の人の創作物に触れて感動したら二次創作を始めた物だが、此方では余り物語の数が少ないのだ、アカデさんは本を書いて出版しているのだからと、出版方法と売り出す為の流通経路を教えてもらい、私も何本か本を書いて出版して見たのだが、私の書く、向こうで触れて来た創作物の2次創作や、丸パクリ物品、結構ウケが良いらしく、流通元の行商人も結構喜んで仕入れて行くので、意外と赤字には成って居ない、調子に乗って色々書いては出版して流しているが、自伝は初めてだ。

 因みに、和尚さんもここぞとばかりに出版して色々と余計な知識を民衆に植え付けて居る、衛生観念や、現代医術の基本や、良く分かる仏教から始まり、自分の流派の秘伝書擬きな戦闘術の教本、あらゆる場所での生き残り方やら色々と・・・

 和尚さんの流派、宝蔵院流槍術(ほうぞういんりゅうそうじゅつ)だったんですか? 凄い今更知りましたけど、秘伝の技とか必殺的なの無いんですか?

 末席でほぼ失伝してるし、人間は基本突けば死ぬから、全部必殺?

 まあ、大抵そんなオチでしょうけど・・・

 アカデさんの研究書も、出版自体は各ギルドや冒険者が買うので赤字では無いらしい、尤も、出版より研究材料の確保や、観察や移動の為に雇う護衛の代金、その他の諸経費で赤字に成って居るようだが・・


「で、題名どうするの?」

 色々と考えは有るのだが、どうしよう?

「生き残る(きのこる)先生サバイバル」

「漢字圏じゃないと意味が分からんだろう」

 和尚さんに突っ込まれる、まるっきりネットスラングなのは確かだ。

 因みに、この先、生き残る事が出来るか?が、点を抜いて平仮名で書いてしまったので、この先生(せんせい)きのこるに読めたと言うネタだ。

「そもそも先生の要素無いですよね?」

 エリスちゃんも突っ込みを入れて来る、何気にツッコミが出来る様に成りましたね、良い進歩です。

「ようこそ異世界、迷い込んだのは坊主でした」

「激しく地味だな・・・」

「異世界坊主の無双でハーレム生活」

「題名音読されると恥ずかしくて死ぬから止めとけ・・・」

 妙に実感籠もってますね?

「この世界で、お嫁さん多いのって普通何で、4人じゃ言うほどハーレムじゃ無いです」

 その視点は有りませんでした。

「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」

「略してガンダラ?ゴブエグ?」

「全部題名?」

「長すぎません?」

「この世界でゴブリンの生態が女の子に厳しくて、托卵式なのは皆知ってるはず・・・」

 うーん、それじゃあシンプルに。



「異世界坊主にしましょうか?」



追伸

これが本編では一応最終回に位置します、長々とお付き合い戴きありがとうございました。

多分終わった振りをして、気が向いたら又書いたりすると思われますので、その時は又お付き合いいただけると嬉しいです。

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