第164話 クリスの鎖

 ここ数日で、裸でも、寝て居る時でも、抱き締められていると言う事が日常と成って来た。

 一緒にお風呂と言う、前回私がパニックを起こした状態でも大丈夫、抱き締められているのは前と同じだったりもするのだが、それでも距離は縮まってきていると感じる。

 あの、そろそろ手を出してくれても、大丈夫だと思います・・・・


 と、そんなこんなで、沢山優しくされた、今まで、何故こんなに怖がっていたのかと言いたくなるほど、只々優しかった。

 この行為は、私の中では、ひたすら怖かったのだ、例えこの優しい和尚さんが相手であろうと、その怖い物と言うイメージは消えなかったのだ、そして恐らく、皆で私が怖がっていると言う事を見抜いた上で、その恐怖が消える迄、ゆっくりと待って、御膳立てしてくれたのだ、そう思うと、頭が上がらない、元から一番下なので上げる頭は無いのだが・・・


「これは要る?」

 と、金の鎖の首飾りと、銀の指輪を渡された、鎖が少し短いので。首に下げるのとは少し違って。首に巻き付ける形になるらしい、首飾り(ネックレス)では無く、首輪(チョーカー)と言うらしい。

 私が貴方の物だと言う証明と言う事で、石は一番固い物、金剛石(ダイヤモンド)永遠の絆を意味すると。

 何と言うか、こんなに良くしてもらって良いのだろうか?

「受け取ってくれる?」

 と、少し不安気に言われた、其処は疑問何て挟まないで良いんです、元から私は貴方の物です、永遠でも何でも、私を縛り付けて下さい。

 余りにも和尚さんの態度が低い物だから、私が変な方向に調子に乗って居る。

「何なら、いざと言う時は売っちゃっても良いよ?」

 とんでもない事を言われた。この人はこの期に及んで・・・

 一切強制はしないから、自分の意志で、好きなようにしろと?

「絶対に離しません!何が有っても!」

 少し怒ったふりをして、精一杯、其の手を握りしめた。

「それじゃあ、これからもよろしく」

 私が力いっぱい握ったその手を見て、和尚さんは安心したように笑った。

「はい!お願いします!」

 こうして、私の居場所が正式に決まった。

 元から此処に居るだろうと言われそうだが、何時でも好きな様に出て行って良い世界と言うのは不安で、私を縛り付ける物が欲しかったのだと、今更気が付いた。

 自分自身が気が付いて居なかった事まで。

 本当に、頭が上がらない・・・


 その後、私が一人で居る時、首に手を這わせて鎖の感触を確かめたり、指輪を掲げて、にやにやする様になったのは秘密だ、このだらしなく緩み切った顔は人には見せられない。


 ところで、この金剛石、結局皆揃いなんですね、私が付けてて怒られません?

 だから怒る要素が無い?

 いや、順位的に・・・・

 魂に刻まれてるだろうから大丈夫?

 はい、其の通りです、愚問でした。

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