第135話 女子会の様な物(灯視点)
「さて、男どもも居無くなったので、偶には女子会の様な物です。」
「女子で良いのかしら?」
お義母さんが無情に突っ込む。
「私も違う気がします。」
アカデさんも乗ってくれないので残念だ。前回一緒にお風呂に入ったので身内の様な物と言う事で。口調も女っぽく安定したようだ。
「で、このメンバーで集まるのは珍しいですけど、何するんです?」
エリスちゃんがそんな事を言うが、そもそもこの4人と言う組み合わせは見た事が無い。
「文化が違うので通じないんですね・・・ボケ殺しは辛いです・・」
ボケにいちいち突っ込むたびにニコニコと笑う和尚さんの気持ちもわかると言う物だ。
「なんでやねん?」
思考を読んだらしいエリスちゃんが欲しかったツッコミを持って来てくれるが、少し違うのです、タイミングも違うのです、やはりあの人以外では会話が微妙に噛み合いません。開口一番滑ってしまったのでちょっと凹みます。
「一先ず乾杯しましょうか、お義母さんお願いします。」
「それじゃあ、今回みんな無事にお産が終わった事と、皆の無事を祝って、乾杯。」
「「「乾杯。」」」
そんなこんなで私が滑った以外は平和に始まった、乾杯しているが、アカデさん以外は授乳期間なので皆ジュースだ。母乳は血液から作るので、血中アルコールがそのまま血液と一緒に母乳に変換されてしまうらしい。そもそも酔っぱらいたい気分では無いので問題無い。
「所で、何で私が呼ばれたのでしょう?」
アカデさんが少し居心地悪そうに呟いた。
「相変わらずギルドに寝泊まりして死体相手にスケッチしてるんでしょう?偶には良いんじゃない?」
お義母さんがアカデさんを引き留める。
「お義母さんとアカデさんは顔見知りですか?」
「ギルドからこの人の研究に出資してるのは知ってるから、予算尽きるとこっちに来るからその時に会うわ。」
お義母さんがそんな事を言う。
「その時に顔を合わせてますね、実は私も会ってます。」
エリスちゃんも言う、成程、初対面だったのは私と和尚さんだけだった訳だ。
「成程、紹介の必要は無いんですね。」
「そうね。で、如何したの?また予算尽きたの?」
ニコニコとした様子でお義母さんがアカデさんに話題を振る。
「研究費は何時でもカツカツですが、今日は灯さんに呼ばれたので。」
話題が此方に戻って来る。
「色々聞きたいことは有りますが、単刀直入に行きましょう。結局女として扱われたいんですよね?」
ぶ
アカデさんが少し吹き出しそうになったが、無事こらえた。
「あら、やっと口調が安定したのね?納得できた?」
お義母さんは納得した様子だ。
「はい、やっと納得がいきました・・」
少し赤い顔で言う、意中の相手が居る顔だ。
「狙い目は和尚さんで良いんですか?」
ぼふっ
アカデさんがまた噴出した、今度はこらえられなかった様だ。
「なななな。」
思ったより分かり易い反応、どうやら当たりだ。
「嫁其の3?」
エリスちゃんが懐かしい言葉を呟いた、アレ伏線だったんですね?
「何であの時威嚇したんだろうと思ったら、その流れでしたか。」
純粋に私たち以外の女の人が和尚さんに近づいたので威嚇しただけなのだが、此処で伏線として拾う羽目に成るとは思わなかった。
「嫌・・・そんな事は・・・」
アカデさんがしどろもどろで否定するが、成程、何と言うか、分かり易い。
「無いの?今なら援護付きますよ?」
浮気相手として和尚さんを取られるのは流石に嫌だが、其れなら私達の下に正式に取り込んだ方が色々問題無い。
因みに、私の中での確信は前回のお風呂だった、一緒にお風呂入って居た時に、不意に自分の性別に確信が持てないのですと話始めた、どうにも相談内容が重いので和尚さんに救援を頼んだのだが、まあその時は無事和尚さんがその使命を果たしてくれたのだが、呼ぶ時に前置きとして。
「あの人は我慢と待て、良しは出来る人ですから、絶対安全です。まあ、誘ったら来る人ですけどね。」
と、その時は特に恥ずかしいと言う様子も無く和尚さんに裸を見せていたのだが。
お風呂に和尚さんを入れる時、ちゃっかり隣に成るように仕込んで見たのだ、アカデさんが和尚さんと話をして、湯船の中で不意に体をぶつける度に、段々と顏を赤くして行った、お風呂でのぼせて居るのかとも思ったが、何時も真っ先にのぼせるエリスちゃんが未だ平気そうだったのでそっちでは無い様子、興奮している様子だった、口の中で触れて良いかと言いたそうな、湯船の中でそんな葛藤が見える手の動きをしていたのだ。
恐らく狙って居ると見込んでの、今回の先回りした攻勢である。
藪蛇である可能性も有るが、一種のカウンセリング代わりに貸し出す位は吝かではない、其処までしなくてもと思うが、実質的に運が悪かった場合は明日は我が身だったと言う状態の相手だ、運良く和尚さんに逢って居なかったら同じか、それ以上に酷い目に合って居たので、他人と思えなかったと言うのが正直な所だ。
自分自身微妙に上から目線の気がするが、第一婦人の座は取って居るのでまあ良いだろう。恐らく和尚さんも文句は言わない筈だ、お風呂の時にも何だかんだで良く見ていたし、嫌な顔もしていなかった。コミュ障モードで手を出せなかっただけなのは分かって居る。色々とバレバレなのだ。
「私みたいな年増で産めない嫁なんて貰っても意味ないでしょうが。」
おや、呆気なく吐いた、認めたと同じぐらいだ。
「あらあら、年上だけど娘になるのかしら?」
お義母さんが柔らかく笑っている。
「和尚さんお義母さんと大体同い年だから今更…」
エリスちゃんも援護を飛ばす。アカデさんの年齢は見た所30前後、和尚さんと同じぐらいか、このメンバーでは年長組、私とエリスちゃんだと倍ぐらいだけど、そもそも和尚さん自体私達と一緒に居る時点で同じ位の扱いだ、元の世界だと警察沙汰だが。
「故郷では産めなくても其れぐらいの歳でも、別に問題無く嫁入りします。大丈夫です。」
そう言って逃げ道を塞いでみた所、真っ赤になって認めますと言う様子でかくりと項を垂れた。
勝った…
いや、勝ってもあんまり意味と利点は無いんですけどね、実質ライバル増えるだけですし・・
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