第120話 後始末1
意識だけ覚醒した、取り合えず目だけ開けて周囲を見回す。
二人共未だ寝ているようだ、揃って俺の腕を人質にして抱き枕状態にしている。
腕枕は地味に腕の血行が死ぬので、抱き枕方式にすると言う事で落ち着いて居る、二人の腕力が常時強化により俺を上回った結果、掴まれたままの場合、解放されるまで身動きが取れないと言う状態になる、まあ、毎日完全に拘束されている訳では無いので、其処等辺は二人の気分と寝相次第である。又、起こしてしまうが無理矢理抜けるのも出来ない事も無いので、どうにかなってはいる。
子育て関係で、未だ夜の授乳や夜泣きは有る為、必要な時はそれぞれ無理矢理起き上がるので、特に問題は起きて居ない。
未だ二人が起きないならまあ良いかと、目を閉じて二度寝を決め込んだ。
唇に柔らかい感触を感じる。目を開けると、灯の顔が目の前に有った。
「おはようございます。」
「おはよう。今日は灯か。」
「順番ですからね。」
灯がくすくす笑いながら答える、因みに、起きなかった場合その日の内に交代と言うか交互に成るだけである。最終的に起きなかった場合、灯に呼吸を止められるか、放置される流れである。
「で、今日は起きられます?」
その言葉に、体内でギシギシを関節を鳴らしながら痛みと違和感を誤魔化して起き上がる。
「見ての通りだ。ちゃんと起きられたぞ。」
「動きが固いですね、誤魔化しても無駄です、エリスちゃんどうぞ。」
相変わらずやせ我慢が意味を成さない、サトラレ状態で誤魔化しても意味が無いのだから問題無いが。
「はーい。」
エリスは出番が有るのが嬉しいと言う様子で笑いながら、回復魔法を使う。
大分痛みが引いて動けるように成った。
「ありがとう、助かった。」
「どういたしまして。」
エリスの頭を撫でる。
「こっちもどうぞ。」
灯がアピールしてくる。手を広げて居るので。抱きしめて頭を撫でておく。
「あら?起きた?」
義母上が優雅に義弟を腕に抱えて授乳していた。隠す必要も無いと言う様子で胸を出しているが、気にした様子も無い。
「ちょっと待ってね、これが終わったらご飯の準備するから。」
何時もの調子である。結局、今回の義弟誕生前から母乳は出るようになっているため、ヒカリとイリスの授乳もしていた為、堂に入った物だ。
「にゃあ。」
ぬーさんが飯をよこせと言う様子で鳴く。
「大丈夫です、こっちで作ります。」
産んだばかりの義母上に無理をさせる訳にも行かない。
指示を出すまでも無く、灯とエリスの二人がご飯の準備を始めた。
手伝おうとした所、私達より回復が遅いのだから大人しく待って居ろとキッチンから追い出されてしまった。
「結局あの後。俺達が出てからはどうなってたんです?」
昨日は結局、この家に着いた時点で力尽きてしまい、一言「ただいまかえりました。」と言って其のまま部屋に行って倒れこんで一晩寝たままであった、二人は溜まった分の母乳は与えないと胸が張ると言う事で、授乳して空っぽにしてからだったので、その間に色々聞いていたらしい。
「結局あなたたちが帰ってくるまで、産婆さんとぬーさんが留守番していてくれたのよ、村の中でもゴブリンが出たり、草原の主が村の中うろついてゴブリンを狩っていたり、ギルドの職員と冒険者が見回りで走り回ったりしていたらしいけど、私も疲れて寝ていたから、産婆さんと見回りのギルド職員が話してくれた分だけしか知らないわ。」
「義父上は?」
結局昨日から会っていない。
「あの人は結局、あの日の夜から帰ってこないわ。多分、書類で埋まってしまったのかしら?」
多分、その線なのだろう。
「なるほど。これ終わったら様子を見てきます。」
「ギルドの職員の人もあなた達が起きたらこっちに来てくれって言ってたから、落ち着いたらお願いね。」
「これぐらい食べられますよね?」
「多分大丈夫?」
灯がそんな事を言いながら山盛りの朝食を持ってきた、大量のパンと大皿にスタミナスープ、かなり多いが、昨日結局ご飯を抜いている状態なので丁度だろう。同じように運んできた灯とエリスの分が俺の分より更に多いが、授乳分と連日の無理の分を考えると恐らく丁度なのだろう。あの時のカロリーネタは何だったのか・・
「あれは本能の様な物ですよ、意味はあんまり有りません。」
口に出すまでもなく返して来る、そんな物らしい。
「それはそうと、さっさと食べますよ。」
「「「「いただきます。」」」」
義母上も揃っていただきますと食べ始めた、何気にコレだけでも宗教侵略である。結局、一杯だけでは足りずに、揃って作った分を全て平らげてやっと落ち着いた。
「「「「ごちそうさまでした。」」」」
「やっと来たな、見ての通りだ、諸々の書類がエライ事に成ってる、もうちょっとで一区切りつくから、それが終わったら帰る、予定だ・・・」
目の下にクマを作った義父上の机には、承認待ちの書類が山になっている、何気に社畜状態、責任感が有るのは良いが、休んで欲しい物である。
机の横には先日渡した身代わり地蔵の入った袋が置いて有った。
「これは役に立ちました?」
何気に拾って袋の口を開けて中身を除き込む。
「うわ・・・」
先に見た灯がそんな言葉を上げた。そんな大げさなと覗き込むと、中身の身代わり地蔵達は見事にボロボロに成っていた。
「此処まで来ると見事な・・・」
思わず呆然と呟いた。
「それ、貰った時から昨日の夜まで、触っても居ないのに袋の中で勝手に壊れてな、今落ち着いたところだ。」
結局、当人は何があったのか意味が解っていなかったらしいが、そう言った物は関係無しに発動する物で助かった。
袋の中の地蔵で無事なのを探すと、一つだけ無事なものが見つかった。取り合えず大事に机の上に置いて置みる。
「無事なのコレだけか、凄いな、死亡フラグどれだけ立てたのやら・・・」
死亡フラグ回避用の神頼みで仕込んでいたが、どうやらギリギリ足りたと言う事らしい。
「ちゃんと効き目有ったようなので何よりですね・・・」
灯が呆れ半分、ホッとしたの半分といった様子で胸を撫で下ろした。
エリスも安心した様子でため息をついた。
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