第105話 ゴブリンたちの生存戦略

 今まで見た事が無いほどに仲間達が増えた。

 群れの中に居たキングがクイーンにクラスアップした、キングとクイーンは独特な匂いが有る、キングやクイーンが居ない小さい群は、この匂いを辿って大きい群れに合流する。

 クイーンが群れに居ると、借り腹を探すまでも無くどんどん子供が増えて行く、段々と自分達だけ、近場だけでは餌が足りなくなって来る、そうして、行動範囲を広げて行くと、他の群れと鉢合わせる。

 そうすると。お互いの群れの代表で話し合い、殴り合い、大きい、強い群れに吸収合併される。

 自分の群れに居るのは我々ゴブリンとしては最大のクイーンだ、其処等の群れに居るキングやホブゴブリンとは大きさが違う、当然の様にこちらの群れに合流、之を繰り返して群れは巨大化して行く。

 大体周囲の群れを吸収、周囲の得物、食糧を食い尽くすと。新天地、食料と住処を目指して群れを移動して行く。

 この森は自分達より強い魔物も多いので、奥地には行けない、大型のドラゴンや大型のロック鳥、その他大型の魔物に出会うと我々ゴブリンは食い散らかされる、我々は旨いのだろうか?

 即ち、新天地は生息域を拡大するために魔の森の外に行く事が重要となる、問題は通り道に人族が巣を作って居る事だ、人の巣では人の雄が特に必死に抵抗するので、我々にも死傷者が多くなる、代わりに人族の巣には借り腹に使える雌が居る、必死に抵抗して来る雄も殺してしまえば只の食糧だ、人族がため込んだ食糧も当然我々が頂く。

 我々が作れない金属の武器や道具も手に入る、我々の作る皮製の防具や黒曜石を砕いた武器より使い易い、我々の数も多少減るが、そのあと増えれば何の問題も無い。

 むしろ、確保できる借り腹と餌次第で儲けが多くなるかもしれない。

 最終的には効率良く増えるためにキングとクイーン、我々通常種が多少生き残れば問題無い、ホブは我々通常種の上位種に当たるが、群れに居ないとなれば直ぐに通常種から生まれるので特に大事にされて居る訳では無いのだ。


 人の巣を襲う時には武器に毒を仕込む、自分達の巣にある便所に溜め込んだ糞と、毒イチイの種を細かく磨り潰して混ぜ、武器に塗り付けて、布で拭う、飛び散るようでは自分たちに被害が及ぶ。

 この毒は、糞により傷口と血液が腐り、塞がらなくなる。毒イチイの種は、弱い物ならば心臓が止まる。この種の毒だけでも十分強いのだが、念入りに毒を混ぜるのがこの生存競争で生き残るコツだ。

 毒で仕留めたエサは美味しくないが、確実に仕留める事の方が大事だ、傷口を大きくえぐり取り、血を捨ててしまえば問題無く食える。

 そして、人間は夜の間、明かりが無いと見えないと言う事は判って居る、同じく夜は寝ていると言う事も、我々は明かりが無くても夜は見える、即ち、寝静まった夜に襲えば良い。


 さあ、生存競争を始めよう・・



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