第80話 助けたものの

「いったん帰ります、後で又来るんでお願いします。」

「はい、ゆっくり休んでください。」

 既に立って居るのも辛い状態で、灯とエリスに肩を貸してもらい帰路に着いた。

 韋駄天の真言の使用後は何時もこうだ、真言の補助が消えると純粋に反動で動けなくなる。気力でどうにか持って居たので、治療を終えて気が抜けて動けなくなったのだ。

 灯とエリスは一緒に韋駄天の真言で加速したが、どうやら二人は常に鬼子母神の加護も付いているらしく、いわゆる鬼の力で回復するらしい、単純な回復力と力比べだと既に俺はかなわない状態である。夫婦喧嘩とかになったら先ず勝てないが、今の所そんな事には成って居ないので、今の所は安全である。

「この状態だと、肩貸すより、姫抱っこかおんぶとかお米様の方が早いですね?」

 実際、エリスが若干伸びたが、身長差がそのままなので、結構バランスが悪い。灯とエリスがちらっとお互いを見て、ジャンケンをした、灯の勝ちだ。

「勝ったので。」

 ひょいと灯に抱えられた、お姫様抱っこだ、抱えられる側になると妙に気恥しい。

「負けた方じゃないんだな。」

「好感度の現れです、喜んで下さい。」

「それはありがとう。」

「さて、早く帰って愛しの我が子と遊びますよ。」

 そう言って灯が足を速めた。


 既に時間は遅いので家に直帰した、ギルド報告は明日で良いだろう。

 義父上も既に帰って来ていて、緩みきった顔で孫達と息子にもみくちゃにされていた。

「「「ただいま。」」」

「お帰り、その様子だと無理したのか?」

「ええ、時間勝負だったんで。」

 現状、灯に抱えられたままである、締まらないにも程がある。

「話は後で聞くから、風呂入って寝とけ。」

 義父上がため息混じりに指示を出す。

「はーい。」

 其のまま移動しようとする。

「そろそろ下ろしてくれても大丈夫何だが....」

「割と楽しいので大丈夫です。」

「そのまま寝せてくれても。」

「流石に汗も酷いので不許可です。」

 既に拒否権は無いらしい。

「すいません、お願いします。」

 諦めてされるがままになった。

 要介護要員である・・・


 次の日、改めてギルドで報告書を上げる流れになった、義父上は仕事と家を分けているので、仕事になる様な事はギルド以外ではしたくないらしい。

「んで、ロック鳥の雛拾いに行ったらゴブリンが居たからそのまま追跡してキングを含む巣を一つ潰してきたと。」

 相変わらず何とも言えない顔をしている。

「はい。」

「それで、一人宿主母体の娘を助けて教会に駆け込んで、胎の中に居る子ゴブリンを浄化して娘を助けたと。」

「はい。」

「お前らが強いのは問題無い、物のついでにゴブリンの里を潰すのも問題無い、助けたのも問題無い、だが胎の中に居たのを浄化して助けた下りは中央にバレるとエライ事になるから此処はある程度ぼかして置く。」

「はい。」

「それでもって、助けた娘なんだが、どうする?」

「どうするとは?」

「直近で捜索依頼が見つからん、下手すると捨てられで身寄りが居ない、出所不明の孤児だと教会の孤児院に預けるんだが、その場合、身寄り無しの孤児拾った冒険者が保護者って扱いで、お前らを親にしても良いって事だ。拒否すればそのまま孤児院だ、ギルドから少し補助金出して教会で育てることになる。そして、助けられた経緯がバレると、多分色々居辛くなる。」

 灯が身受けすると言っていた流れそのままだった。

「私たちで身受けします。」

 エリスが強く出た。

「うちのエリスならそう言うと思った。俺とエリザは文句は言わんから、安心しろ。」

 義父上が優しく笑う。

「まあ、予測通りですね。こうなると思ってました。」

 灯も笑う。

「拾われた側なので。」

 小さくなってみる。

「お前らは逆だと思うが、其れだったらそう言う事で書類作って置く。」


 キングの死体とロック鳥の雛も納品しておく、規模が小さい集落の小さなキングだったので金貨3枚、雛は大銀貨3枚だった、繁殖期にずーっと張っていてひたすら拾って行くのが正当なスタイルなので1羽当たりの値段は其処まで高くなかったらしい。

 雛の肉は其処ら中が内出血しているので全身レバー状態だった、不味くは無いが、微妙・・



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