第63話 討伐任務
次の日、指定通りギルドに来ると、既にレンタル先、深紅の翼のメンバーは集まっていた。
「お待たせしましたか?」
一言かけて合流する。
「いや、俺たちが速いだけだ、他の奴らも付けて、20人ほどに成る予定だ。」
「大分人数が多いんですね、どんな仕事の予定なんですか?」
大人数での仕事は初めてだ、何をするのだろう?
「ゴブリンの巣、殲滅任務だ、逃がすと困るからこうして人数を集める。」
「ゴブリンですか・・・」
「気が進まないのは判るが、魔の森ならともかく、他の土地に居るとまずいんだ、生態系が崩れると言うより、ゴブリンより強い生き物がほぼ居ない、増殖力がヤバい事に成る。魔の森なら意外とゴブリンを狩れる奴もいるから其処まで増える事も少ないんだが・・・」
外来魚、ブラックバスみたいなもんだろうか?
「それは判りましたが、巣の規模は?」
「俺らが偵察任務で確認したんだが、100匹規模だ、下手に刺激すると巣を移動しちまうから、偵察のみで引き揚げて来た。」
「捕まっていた人とかは?」
「見た限りでは居ない、恐らく他の動物を苗床にした類だろう。」
「攻め方は?」
「素直に囲んで持ち場を守る、残りは遊撃だ。」
「何でそんな効率悪い事を・・・」
思わず突っ込む。
「効率悪いか?」
「素直に燃やして逃げ道だけ塞いだ方が楽です。火攻めできない理由でもあります?」
「いや、火攻めなんかしたら・・そうか、やらない理由もないんだな。」
「山火事と逃がす事、薄い所を抜けられる事、一人で守ってるのが負けたらを考えて。山火事になったら迎え火や切り倒して消化すれば良いと思いますが。」
それで如何にかなる規模の火事で収まれば理想だが、火の広がり方勝負だ。
「んー、出来ない事も無いし、この時期の雨は・・・」
「この時期はこの辺乾期ですか雨期ですか?」
正直此処で一年過ごした訳では無いので、気候の事も正直分からない。
「そろそろ雨期になるな、最悪天の恵みに任せるか。」
雨の降る時期なら大規模に燃えた影響での雨乞い効果も期待できる。
仏教的に水担当は、水天が居た、「天之水分神・国之水分神」(あめのみくまりのかみ・くにのみくまりのかみ)と「天御中主神」(あめのみなかぬしのかみ)の習合で、竜の化身、ん?竜か。
「ちょっと持って行きたい物があるんで、ギルマスに合って来ます。」
「ああ、装備は調えて置いてくれ、二日がかりの強行軍になる予定だ、こっちも油調達して置く。」
どうやら火計も選択肢に入ったらしい。
職員を捕まえてギルマスを呼び、前回の竜の鱗を一枚もらっておく。骨と牙は復元の関係で大事なので枚数の多い鱗になった。大規模に影響する雨乞いだとするのならば触媒は必要だろう。
急いで朝市に行き、食料を調達して置く、二人に一食分の食料はもらっているが、2日だと足りない。
「よし、集まったな、新顔も居るから、紹介して置く。「深紅の翼」の期待の臨時メンバー、和尚だ。よろしく頼む。下手な詮索はするな、ギルマスに睨まれるぞ。」
ハハハ、と乾いた笑いが一同に浮かぶ、成るほど、義父上の仕込みもありか。視線がこちらに集中したので。
「よろしくお願いします。」
と、頭を下げて置く。
どうやら今回の大規模PTの全体リーダー扱いらしい、深紅の翼のリーダーが仕切っている。
「んで、今回は俺、ヒゲクマが全体を仕切らせてもらう。異論はないな?」
名前がそのまんまだ、覚えやすくて良い。
「「「「オウ!」」」」
結構ノリが良いらしく、反対者も居ない様だ。
「それじゃあ行って来る、無事を祈っててくれ。」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
職員一同に見送られて出発した。
「現在地がこの辺で、予定地はここだ、この辺に集落があるから、実際何処に放火するかは現地に着いてからだな。」
沼のほとりで休憩しながら、地図を広げて、改めて場所を確認する。
「今日は早いがこの辺で一泊、夜明けきる前の早朝に出発して、朝のうちに到着だな、下手に大人数で近づくと、気づかれて警戒される上に寝込み襲われるからな。」
「なるほど。」
「夜警は2人ずつ、1時間交代だ、くじで決めるが、飯炊きした奴は免除だ、どっちにする?」
「じゃあ料理で。何作ります?」
「汁物で一品作ってくれれば良い。不味いの作るんじゃないぞ?」
「りょーかい。」
大鍋いっぱいに保存用の干し肉と適当な野菜を放り込んでスープを作った、どうやら好評だったので全て無くなった。
器はそれぞれ自前らしく、終わってからの洗い物は大鍋だけで済んだ。
一部で酒を飲んではしゃいでいるのが居るが、明日の朝は早いらしいので、ツエルトを設置して寝ることにした。考えてみると、一人で寝るのはこの世界に来て初日以来の二回目か、ずーっと灯とエリスが付いて居てくれたな、助かったのは俺なのか、それとも二人か、肉体的には俺が助けた訳だが、精神的には助けられた側か。生前、向こうの世界でここまで受け入れられた事も無かったしな、俺にとってこの世界は救いそのものだが、灯とエリスにとっては如何なのだろう?そんな益体も無い事を考えながら眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます