第20話 着替えと新技
「そういや、エリスの服で余ってるの無いか?灯に似合いそうなの」
「私もあんまり持ってないですけど、ちょっと探してみますね」
そう言ってエリスは部屋から出て行った、
「あらかじめ言っておくが、胸とかでマウントとらんようにな」
「お約束ですね、というか、昨日解消してあげたんでしょう?」
「あれで解消されてればいいがな。女心はよく分からんし」
「でも、昨日エリスちゃんだったんだから今日は私でお願いしますね?」
「はいよ・・」
「これで良いですか?」
エリスが服を持って戻ってきた、
「起きられるか?」
「大丈夫です、よっと」
「着方分からないのでエリスちゃんお願いします」
「はい」
「和尚さんは?見てますか?外行きますか?」
「見てる」
堂々と言い切る、着替えは良いものだ。
「どこら辺が徳の高い坊様なんでしょうね?」
灯が笑いながら突っ込む
「日本の坊主は修行中の禁欲期間以外緩いぞ、結婚できるし」
「そういえばそうなんですよね」
俺が生臭似非坊主なのは確かだが。ちなみに日本で坊主の結婚が認められたのは明治からである、国の宗教が神道一本になってしまって国の補助が無くなった代わりに規制が緩くなったのである。江戸時代までは神道仏教同時システムだった代わりに規制がきつかった。
そんな事を言いながら灯はエリスに手伝われて服を着替える、そういえばこっちの下着どうなってるんだろうと思ったら下は緩いふんどし方式だった、なるほど馴染み深い、上はなかったので気になる場合は重ねるか邪魔な人はさらしをまくらしい、エリスは重ねて裾を縛っていた、なるほど、この辺改革していくことになるんだろうか、ブラジャー無いと垂れるしな。というか、さっきから灯が脱いでいるというのにエロ以外の雑念が多すぎる、それはそれで失礼な気がする。
「見るならちゃんと見ててくださいよ」
「逆じゃないか?」
灯が唇を尖らせて文句を言った、
「今更です」
「出来上がりです、どうです?」
灯が制服のブレザーから現地の服になった、そこそこ似合ってる、正直前のブレザーの方が可愛いのだが明らかに目立つのでしょうがない、現地の服が地味な茶色やクリームがかった白が多いのだ、なので今まで着ていた紺色の上着と赤ベースのチェックミニと黒のオーバーニーはかなり目立つ。
「いいと思う、可愛いんじゃないか?」
ふう・・・と灯がため息を付いた。
「聞こえの良いおためごかしはいいので、本音をどうぞ」
「なんでわかった、前の方が可愛いのは確かだが無理しておしゃれしなくていい」
「こういう時の女の子は可愛いが優先されるのです」
「この間みたいに森の中で最終的に苦労したら生存率下がるだろ」
「町中にいる分には着ていても良いですよね?」
「絡まれるの面倒」
「可愛い娘を二人も連れて歩いたらもてない男のやっかみで絡まれるかもしれませんが・・」
ずいっと寄せてくる。
「そういう時に護衛するのも男の甲斐性です」
また極端なの言い切った。
「・・・・、わかった、そこは認めても良いが、着たきりスズメは臭くなるから洗濯はしろ」
「はーい」
「でもそもそも目立つなんて言ったら、和尚さんの服もよっぽどですよね」
エリスの方も突っ込んできた、表地は青だが裏地が蛍光オレンジのウインドブレーカー系の上着と黒系のズボン、一時期エリスに着させていたのは蛍光イエローのツエルトである、それと鮮やかな青のリュックサック、所々に山用のウェア一式である、性能一辺倒だとこうなるのだ。
「目立つか?」
「かなり・・・」
「その蛍光色はこっちでは絶対にありませんよね?」
「生地の編み目も細かすぎてあり得ません」
「だが待ってほしい、変な格好していたとしてわざわざこんなおっさんに絡んでくるモノ好きは」
「ここに」
「いますね」
「はい」
二人に詰め寄られたので負けておく。
「じゃあ服の優先度は若干下で」
目立つ件は諦めよう。
「自分が着替えるって線が出ない辺りがらしいですね」
「見た目ともかく性能最高級だからこれ着替えると生存率下がるんだ、見た目優先して生存率下げてどうする、俺のは見た目変えるとしたらこの上にプロテクター」
優先順位が違うことを説明する、モンペルのゴアテクス様である、高いのだ。いや、値段で見ると制服の方が高いけど機能的にあれなので。
「私のは見た目装備ですが前線には出ませんから」
その線を譲るつもりはないようだ。しょうがない。
「それなら上着でも上に羽織ってくれ」
「それぐらいなら納得します」
流石に折れてくれた、何も準備しないで不意打ちで大けがとか洒落にならない。
「しゃあないから簡単にできそうな護身用真言でも教えてみるか?」
「是非」
「九字切りってわかるか?」
「りんぴょうとうしゃ・・って奴でしたっけ?」
灯がうろ覚え気味に途中まで唱える、流石に全部唱えないと効果が出ないか。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん」
指二本伸ばして真言に合わせて縦横と九字を切る。
「半信半疑だが発動するんだな」
格子状に壁が出来ていた、自分でも触れてみる、
「試しにこの壁を叩いてみてくれ」
エリスと灯がおっかなびっくり格子状の壁を触れる、固いようなのでグーでゴンゴンと叩いてみている、
「納得した?」
二人が手を離したあたりで指をぱちんと鳴らして手刀を収めると格子状の壁が消えた。
「指が二本なのは剣の暗示だ9回ほど空間を切り分けるイメージで、最後に押し付けるイメージで押し付けると発動する」
「まあやってみ?」
何度か試すと幾分弱いが灯が出来るようになった、
「これだけで出来るんだったら陰陽師って楽なんでしょうか?」
「この手刀でやる早九字は早くて簡単な分威力弱めって言われてるからな、そもそも向こうでは目に見える発動なんて先ず無いからなんともな」
そもそもこの世界の方が真言やらお経が発動するのだから何が何だかであるが。
エリスは発音が難しいのか難航していた、信仰心とかも影響するのだろうか?
そっちはとりあえずおいておいて正式に印を組んでやってみる。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん」
一文字ずつ手印を組んで発動させる、先ほどより大きな格子状の壁が出来上がった、
「こうなるのか」
早九字の時は1m4方程度だった壁が今度は部屋いっぱいに発動して部屋を二分していた。
急いで指を鳴らし、手刀を収めると、格子の壁は同じように消える、実際の壁は無事だった。
「びっくりした、壊れなくてよかった」
ふうと溜息を付く。灯とエリスがうわあ・・と言う呆けた目でこちらを見ていた。
「実験は外でやりましょう?」
「そだな、うっかり壊れたりしたら悪い。」
外に出ようと部屋の戸を開けたら近くに来ていたお義母さまがいた、
「さっき凄い大げさに魔法発動してなかった?」
「はい、犯人俺です、お騒がせしました」
頭を下げる。
「こちら犯人です、ごめんなさいって」
エリスが翻訳する。
「外から見えました?」
「家ごと真っ二つになってたわよ?」
「はい?」
「だから何事かと思って見に来たの、神様でも降臨したのかと」
「大げさでは?」
「大げさじゃないかって」
「大げさじゃないから困るのよね、あの規模の浄化結界街中で発動したってばれたら多分教会来るわよ?高名な聖人が降臨したとか、最近神頼み必死だから」
「来てくれるなら手間が減るので助かるんですがね」
「来てくれるなら手間が減るから丁度良いって」
「あらまあ豪胆ねえ、丁度ご飯の時間だから食べながら待つ?」
「大体教会で感知したとして急いで1時間ってところですね」
「結構遠いんですね、それじゃあ来るか来ないか準備して待つとします。」
「準備して待つのでご飯にしましょうって」
「はいはい、灯ちゃんの分も大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「大丈夫だから食べられるって」
「それなら安心ね」
サンドイッチと野菜のスープが出てきた、昨日の分は無くなったので新たに作ったらしい、流石に昨日ほど極端な精力メニューではなかったがニンニクは効いていた。
食べ終わった俺は座禅を組んでお経を上げる、いわゆるお勤めをする、そっちの聖職者が来るのならはったりは効かせないといけない、般若心経を唱えて周囲を浄化しておく、さて、向こうはどう出るかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます