第10話 襲撃される
落ち着いて少女の様子を見てみる、服はボロボロ、端切れを適当に巻き付けただけで穴だらけなので穴から色々見えそうなきわどい感じに成っている、これはこれで眼福だが、まあ服の事は後で良いか、死にはしないだろうし、シラミとかノミとかいそうだが。
「さて、そもそも言葉は通じるのか?」
根本的な事を今更言ってみる、通じなかったら色々困るが、まあその時はその時だ。
「今のところしゃべってくれません、身振り手振りで言うことは聞いてくれますけど。」
「暴れたりは?」
「大人しいもんでしたよ?」
「まあ、そうじゃないと灯が無事なのもおかしな話になるんだよな。」
「ですね・・・」
今更危ないことやったと自覚して疲れが噴き出した。
「今日は疲れた、すまんが風呂無しだから鍋のお湯で拭いて誤魔化してくれ、いざという時の罠だけ設置しとくから、何かあったら起こしてくれ。」
そう言って戦利品のロープで周辺に鳴子を設置してシェルターに入って横になる、考える余裕も無く意識がなくなった。
灯視点
「眠りましたか」
これで安心して脱げる、いや、前回しっかりと全部見られてしまったが、恥じらいを忘れてはいけない、この子に見られてしまうが女同士だから気にしない方向で、服を脱いで裸になる、「若さは武器だから堂々としろ、可愛いんだから」と無駄に力強く言われた前回を思い出す、いや、なんでそんなものを思い出すと自分でつっこみながらタオルを鍋に浸してお湯を絞る、まずは自分の体を拭いていたら視線が気になった、少女がこっちを見ていた、ガン見である、こっちの裸がめずらしいのかもしれないと思いつつ、そのまま拭き終わり、上着を羽織る。
「あなたも脱いで。」
そう言って脱がせる、大した抵抗もなく脱いでくれた、しかしこれは服と言っていいのか微妙だ、本当にぼろきれを適当に体に巻いただけだ、咄嗟に連れ出す際にせめて裸ではしょうがないと巻き付けただけだから当然だが、後でちゃんとした服を調達したい、こうして裸にしてみると自分よりベースは良さそうに見えるが、体中に細かい傷が見える、あの人はこういう幸薄そうなのは好みなのだろうか、そんな益体もないことが浮かぶ、股のあたりを拭いたときに白濁液が垂れてきた、うわ・・・と思い少し躊躇する、あの人のではないのだろうしあのゴブリンのものだろうか、思わず念入りにぬぐい取る、あんなのに乱暴されたのだとすると自分でも壊れた方が楽だと思う。心を壊すのも無理はない、あの人がこの子の世話を私に丸投げしたのも気を使ってなのだろうか?男怖がるといけないからとか?そんな事を考えていた所で少女が震えていることに気が付いた、寒いのか怖いのか、自分が脱いだ時には寒くもなかった、怖かったのだろうと抱きしめることにする。
「怖かったの?もう大丈夫だから。」
そう言って抱き締めた、言葉は通じていないかもしれないけど、何かを喋っていた方が落ち着くはずだ。
「あの人あれで結構強いし優しいんだから」
何ともなしに口をついて出た言葉に自分でも驚く、そんなに頼りにしていたのか?まあ自分自身あの人と合流出来ていなかったらまず間違いなく死んでいたのは間違いないし、この娘と同じことになっていてもおかしくはない、そう思うと自分は幸運だったのかもしれないと思う。
「だから大丈夫。」
そう言って抱き締めていると震えが止まって寝息が聞こえてきた、少しでも気が休まれば良いと思う、問題は、自分自身の力では移動させるのが一苦労だと言うことだ、連れ出す時も自分で歩いてくれたから連れ出せたのであって、あの人のように持ち上げて走るなんて無理だ、あの人起こして手伝ってもらうべきか考えたが今日は無理をさせている、起こすのも悪いと言う結論に達し、四苦八苦しながらシェルターに運びこんだ、さて寝るかと横になって眠ろうと目をつぶったところで。
からん
と音が鳴った。
「え?」
まさかと思い固まる、
からん
と、又響く。
「起きてください!」
思わず大声を張り上げた、寝ていた尚もばっと目を開けて起き上がる、さっきまで寝ていた少女も体を起こしたが、ガタガタ震えていて動けそうもない。
「行ってくる、後は頼んだ。」
尚さんは槍とナイフを持って闇の中に飛び出していく、自分もナイフを掴んで構える、結局シェルターの中で震えているだけだが、何もしないよりはましだ。
ガサガサと言う走り回る音、ぎゃあぎゃあと言う叫び声、バキバキと枝の折れる音が聞こえる、焚火は消えてしまったので枝の隙間からの月明りしかない、慣れれば意外と明るいかもしれないが、影になるともう見えない、結局二人でガタガタ震えながらシェルターの中で震えているだけだ、ふと暗闇から何か飛び出してきた、
(え?)
「あっぶねえ」
横から蹴り飛ばされたような形で飛んできた影が軌道を変える、尚さんの声が響く。
「すまん、ライト忘れてた。」
やたらと軽かった。
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