転生先不定、ホームレス

志泉

プロローグ

ホームは白線が延々と続いている。


番線は数え切れない。


駅員は見受けられない。


電車は見覚えがない。


乗客はいるように思えるがいないようにも思える。


「今日も滞りなく乗車率は100%になった」


私はここの駅長。この独り言を何度も言ったはずだが始めて言ったように感じる。


この駅は始発と終電列車が訪れない途中下車ができない駅。乗客が途切れることなく訪れる。


「あのう、すみません、私はどこの電車に乗ればいいのでしょうか?」

「あなたは、地下3階の0番線でお待ちください。そうすれば喚ばれている駅までの直通列車が来ます」

「ありがとうございます」


この駅は信仰の有無で地上ホームと地下ホームに分かれる。信仰があるから優遇されているというものではなく単に調度品やデザイン上の配慮となっている。もちろん、組織だった信仰であればその先の下車駅の世界はデザインされた世界が広がっている。


「さきほどの少年は、零に拘る存在に喚ばれたのだろう」


無宗教の人々はそれぞれの来世を一からデザインしてそれぞれの世界に行く。それゆえ不確定要素が多く入り込み、不安定な世界に行くことが多い。まあ信仰の自由を信じているから、と無宗教の人は自己弁護するからとやかくいうことはない。別の世界の自己責任には法律は及ばないという考えらしい。


「別の世界が必ずしも自分に都合のいい完璧な世界だなんて、誰が補償してくれるんだか。無宗教なのに神様に補償してくれと言うのか?というか宗教がなくても神様を信じればいいだろうに…」

独り言を言いつつも私はこの仕事を続ける。この仕事は私の仕事だと疑問を感じないからだ。


「すみません、私はどこのホームに行ったらいいでしょうか?」


メガネをした青年が訪ねてきた。一見すると人を信じていない燻んだ目だ。


「はい、あなたは地下3階の10番線でお待ちください。そこで待っていただくと直通列車が存在しています」

「ありがとうございます」


その青年は虫を見るかのような感覚で私を確認した。


「…冷たい人だな」


この駅には不思議な人が来ることは珍しくない。たまに送迎人が来ることがあるがそれは地上ホームに限る。地下ホームは一人だけである。そして、地下に限り地上にはない下り列車が存在すると業務記録には記載されている。


さきほどの人はその可能性がありそうだったが、どうだろうか。私は考えることはしたくない。


この駅は今日も足音が途絶えることがなく、次の列車がやってくる。


私は駅長としてこの駅を一人で切り盛りしている。


「さて、次は団体客が来るようだ」


私は青年のことなど忘れて次の仕事を始めた。

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