異世界でも兄貴かっけぇッス!

愉悦太郎

第0話 これが俺の武勇伝

桜の花が咲き乱れ、暖かな風と共に各校にて新入生が歓迎される中。

ここだけは別であった・・・・

〇市△町にある、不良校として有名である、私立絆超ばんちょう高校。

ここに、新たな伝説が生まれる!!


「ほぉ、ここが絆超高校かぁ。」

学校指定の学生服にバッチリと決めたリーゼントの青年は呟く。

その青年は偉そうに校門前に立ち、腕を組みながら辺りを見ている。

どうやら、校門から校舎を窺っているようだ。

本校へ入って行くのはどれも金髪やピアス、変形学生服と言った見るからに不良が主だ。たまに不良の餌食になると思われる人が混じっている。

成績が落ちこぼれのやつか、それともかなりの変人なのだろう。

数十分経つと、青年の後ろから声が聞こえてきた。

「兄貴~!お待たせしました!」

手を振りながらやって来たのは現代によくある不良の髪型でこちらも学校指定の学生服だ。とてもニコやかでいる。

兄貴、と言うからに兄弟や舎弟だろうか?

「遅いじゃねぇか。何かあったのか?」

兄貴と呼ばれる男は問う。

「実は、他校の奴に絡まれたので…すんません。」

自分の頭を押さえながら申し訳なさそうに男は言う。

「まぁ、いい。とりあえずだ。二年と三年の番長候補潰すぞ。」

げ…と言いながら「本当にやるんスか?」

と聞くと、男は「おうよ。」と答えた。

「俺が番長になりゃこの高校も多少は風紀が良くなるだろ。」

「兄貴…かっけぇッス!」

そう、この男こそ絆超高校の番長となる男・・・

華の喧嘩屋 山吹 錬磨である。


「殴り込みじゃァ!」

その第一声から始まり、数分後にはその組の番長候補とその取り巻きは倒された。

他の者は戦意を喪失し、教室の端によって山吹を恐れている。

二年のクラスから順に、制裁と言う名の殴り込みが始まる。

一人、また一人と瞬く間に倒して行った。

そして、その数時間後・・・

圧倒的力にて、三年まで倒し見事絆超高校の番長となったのだった。


「と、これが兄貴の武勇伝ッス。」

「はぁ、ところでお主は誰だ?」

白装束の長い白髭を生やした老人は問う。

「自分スか?自分は、話の最初に出た柴田 水天ッス!兄貴の舎弟をやらせて貰ってます!ね、兄貴!」

ハイテンションな舎弟、柴田 水天の後ろには、腕を組ながら壁に背を凭れた男。

絆超校の番長、山吹がいた。

「で、爺さん。」

山吹は立ちあがり、老人にまで近寄った。

「これは、どうしてくれるんだ?」

「どうするも何も、生まれ変わるのを待つしかないじゃろ。」

バンッ!卓袱台を思いっきり叩く。

「こちとら、爺さんの手違いで二人とも死んだんだぞ!何とかするのが礼儀だろうがァ!」

咆哮のような怒声を受けるも、老人は一切怯まず、「さて、どうしたものかの・・・」と呟きながらお茶を啜った。

「そうじゃな。では、異世界転生なんてどうだ?一度死んだ者が蘇るなんて不気味ったらありゃせんからのぉ。勿論、肉体はそのままで転生させてやるぞ。」

・・・それにと付け加えるように

「お主らが望む物を一つずつ、なんでもくれてやろう。」

老人はニヤける。

「マジッスか!?」

柴田が食らいついた。

「こりゃ、ありがたいッスよ!兄貴!!」

「まぁな…でもよ、先に転生先の世界について説明しろ。それぐらいはマナーだろ?」

やれやれ…と言わんばかりの顔で「仕方無いの……」と言いながら続けて、転生先の異世界について説明を始めた。


異世界について、簡単に説明するとこうだ。

異世界は様々な種族があること。

平和だった世界であったが、突如魔王が現れること。

ほとんどの種族が暮らす帝国と世界を支配しようと魔王が度々襲っていること。

帝国は魔王を倒す勇者を待っていること……だそうだ。


よくわからないが、頭に入ったのはこんな感じだ。

「ほぅ…なるほどな。」

「理解できたかの?」

「あぁ、俺じゃあ理解出来ない事が理解出来た!」

まるで漫才のようである。

「・・・・こりゃ困ったのぉ。」

老人は呆れた顔をした。

「つまり、魔王倒せば平和になるって事ッスよね?」

柴田は老人に問う。

「まぁ、そうじゃの。それで、本題に入るが・・・何が欲しいのじゃ?」

二人は考えた。

異世界で役に立つ物と言えばなんだろうと…

釘バット、鉄パイプ、ドス、ナイフ・・・

「自分、魔法使えるようになりたいッス!」

「俺は、その世界の知識だ。」

「ほぉ。お主、結構考えておるのじゃな。」

まぁな。と山吹は返す。

「では、特別サービスで町の近くまで飛ばしてやろう。健闘を祈るぞ。」

一瞬、目の前が真っ暗になった。

そして、気が付けば見慣れない景色。

アルプスの草原のような大地、都会の空気よりも格別の美味さの空気。

そして、よくわからん緑の小人・・・

「はい?緑の小人・・・?」

「ブッコロス!」

「ブッコロス!!」

どうやら、五体のゴブリンに囲まれたようだ。

「・・・謀ったな!あのジジイ!」

その叫びと共に、一斉にゴブリンは襲い掛かってきた。

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