上を向いて・・・

勝利だギューちゃん

第1話

空を見上げた。

見渡す限りの青い空

「日本晴れか・・・」

風がとても、心地いい。


どこからともなく、一頭のチョウがひらひらと飛んできて、

そして、僕の肩に止まり羽を休めた。


「そういえば、チョウは死者の魂と言われているな」

もし、そうならこのチョウは、誰の魂だ。


両親はまだ生きている。兄弟も生きている。

親戚も生きている。


身内ではないだろう・・・


すると、誰だろう?

当たり前だが、チョウは答えない。


チョウは、僕の肩に止まったまま動かない。

「モンシロチョウか・・・」

いや、種類はどうでもいいのだが・・・


(久しぶりね)

えっ、何だこの声?

(ここよ、君の肩の上)

まさか、このチョウ?


「えっ、君は・・・」

(シー。そのままで答えて。

心の中で会話できるから・・・)

(そう・・・)

(改めて、久しぶりね。泰道(やすみち)くん)

(何で、僕の名前を?)

(私の事、わからない?)

(うん)

会った事があっても、チョウの姿ではわからない。


(私よ、佐倉由梨よ)

(佐久良さん?)

去年までクラスメイトだった女の子だ。


親の都合で転校したはずだが・・・


(君が、その姿でいるってことは?)

(うん、死んじゃったの、私・・・)

(いつ?)

(ついさっきよ。交通事故でね)

(事故?それにしては、さばさばしてるね)

(うん、悔いなく生きてきたからね。未練はないよ)

でも、周りは悲しむだろう。


よく自分は笑いながら、周りは悲しむような生き方をしろというが、

彼女はそれを、貫いたのか・・・


(でも、どうして僕に会いに?)

(君に言い忘れていた事があって・・・後悔したくないので、こうして会いに来たの)

(言い忘れた事?)

何だろう・・・嫌な予感しかしないが・・・


(君はよく、下を向いてるね)

(うん)

(それはよくないよ。今日みたいに、上を向いて)

(えっ)

(君は、魅力的。ただ、自信がないだけ)

(自信?)

確かに、。ないと思う。


(自信を持って上向いて歩けば、君は絶対に幸せになれるから)

(・・・佐倉さん?)

(じゃあ、私は行くね。いつか、向こうで会おうね)

(向こうで?)

(うん。でも歓迎の準備があるから、なるべくゆっくりね。またね)


そういうと、佐倉さんは飛んで行った・・・


「上を向いてか・・・」

確かに下を向いても、地面しか見えない。

でも、上を向けば。色々な物が見える。


僕はいつ、向こうへ行くのかわからない。

でも、その日までは上を向いて生きよう。


いつか、彼女に会った時に、恥ずかしくないように・・・

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上を向いて・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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