第7話 新しい同室者

2019年10月31日



夜中、25時過ぎた頃に突然何者かに起こされた。

声をかけられたのか、ベッドを揺すられたのか、

良く覚えていない。

寝ぼけ眼で『はい』と返事をする。

薄暗い病室の中、ベッドを囲むカーテンの足下側の隙間から、

立ってこちらを伺っている人影が見える。

「夜分すいません」

男性の声。

顔は良く見えないが立派な顎鬚が印象的だった。

「今度同室させていただきます岡田と申します。よろしくお願いいたします」

そう言うと、視界から消えた。

カーテンの陰になって見えなくなったと言う雰囲気だったので。

『ご丁寧にどうも』と言おうとして、

上半身を起こし、ベッドの上を四つん這いで行ってカーテンをめくってみたら、

誰も居ない。

夢?

良く考えてみたら、こんな夜中に自分で歩けるような病人が入院して、

挨拶に回ると言うのも変な話。

同室のほかの人達も何事も無いように寝息を立てている。

気にせずそのまま寝直した。


今日、昼過ぎ頃、うちの大部屋に急患が運ばれてきた。

交通事故で足の骨を折ったとの事。

で、良く見ると。

その患者、凄く立派な顎鬚を生やしていた。

しかも、その名字が『岡田』。

よくある苗字ではあるけれど。

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