ただ彼の幸せを願って...

ゑゐゑむ

幸せになるんだよ

俺は2年前、最愛の彼女を病気で亡くした。


俺は中西 潤。

社会人2年目の24歳。

一部上場企業に勤める、普通のサラリーマン。


ただ、少しだけ、霊感があるのかも知れない...


「ただいま」


一人暮らしで誰も居ないはずのアパートに帰ってきた潤は、何故かそう言った。


「お帰り潤!!」


そう出迎えてくれたのは、

林 夏帆。

二年前に病気で死んだはずの、俺の彼女だ。


夏帆が亡くなって一年間、仕事で外出する以外は家で塞ぎ込んでいた潤だったが、


「潤何やってんの?」

「え?...」


聞こえるはずのない、懐かしい声が聞こえた。


「なんで?...」

「いや〜、潤に会いたくなったからおばけになって戻ってきたの(笑)」


こうして俺と夏帆の、二度目の同棲生活が始まった。



「ちょっと〜!またコンビニ弁当??ちゃんとしたの食べないと!!

わたしご飯作れないんだから!」

「すまん、気をつける。」

「も〜!」


夏帆は、幽霊になっても以前と変わらずお節介だ。

けど、いつまでも夏帆を引きずってばかりではいられない...


「夏帆、明日同期に合コン誘われててさ...」

「そうなの!?いいじゃん!頑張ってね!」

「いやその...ごめんな...」

「なんであやまるの??わたし幽霊だし(笑)」

「なんとなく」


本物の夏帆はもういないのに、夏帆を忘れられるはずがなかった。


*********


次の日。


「潤!合コン行こうぜ!」


彼は同期の福元 哲也。

入社してから一番仲良くしている同期だ。


「ああ、行こうか」


合コン会場に着くと、先に女性二人が待っていた。

二人共普通にレベルが高い。

一人は小柄で可愛い系。もう一人はスレンダーで美人系だ。

ちなみに、小柄な女性は普通にタイプだった。


「ごめんごめん!待たせちゃった?」


哲也がそう聞くと、


「ううん、今来たとこ〜!」


小柄な女の子が答えてくれた。


「それじゃあ、入ろっか!」


こうして、人生初の合コンが始まった。


「ちっちゃい方の私は明希って言います!」

「ちっちゃくない方の静香です。

二人とも保育園の先生してます!」


「俺は哲也、こいつは潤!二人共営業だな」


各々自己紹介を終え、雑談をしていると、


「わたし、トイレ〜」

「わたしもいく!!」


二人がトイレに立ったので哲也が、


「お前どっちよ?俺は静香ちゃん!」

「ん、俺は明希ちゃんかな」

「おっしゃ!綺麗に分かれたな!

あとは、お互いグッドラックという事で!!」

「わかった」


合コンはトラブルなく終わり、お互いにラインを交換した。


*********


家に帰ると、


「どうだったどうだった??」


そう夏帆が聞いてくるので、


「一人可愛い子がいたよ」

「やったじゃん!頑張れ〜♪」

「ああ、ありがとう」


*********


その後何回か明希さんとデートをして、


「潤くん、わたしと付き合ってくれないかな...」

「.......ああ、よろしくな」


二人は付き合う事になった。

実際明希はいい奴だった。

なんの文句もなく。

ただ...潤は夏帆の事が気になった。


*********


「ただいま」

「おかえり、潤」


家に帰ると、夏帆が少し透けて見える気がした。


「夏帆...?」

「潤、明希さんとお付き合いしたんだね、よかった!」

「え?...なんで分かったんだ?」

「だって、私の役割が終わったんだもん」

「何言って...」


夏帆はいっそう優しい表情を浮かべ、


「私はね、潤に幸せになってほしかったの。

私に、縛られずに。

それが、わたしの唯一の心残り」


夏帆は、ただ俺に会いたくて戻ってきたのではなかった。

それは、俺のため。

夏帆を亡くした後も、俺は夏帆を頼ってしまっていたのだ。


「だからね潤。

わたしの分もいっぱい幸せになって?

わたし、上から見守ってるから。

潤も、その家族も。」

「夏帆...嫌だ!まだ行かないで...」


涙が止まらない。


「それが最後のわたしからのお願い。

守れるよね?」

「うん...うん...」

「わたし、待ってる。

先に行っちゃうけど、向こうで。

潤もこっちに来たら、たくさん思い出話を聞かせてね♪」

「ああ...約束する」


「大好きだよ、潤」


最後に俺たちは、別れのキスをした。


俺は、これから沢山幸せになるよ。

夏帆の分もな。

ありがとう。俺も愛してるよ、夏帆

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ただ彼の幸せを願って... ゑゐゑむ @pokorin1130

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