好きです! 先生!
綿麻きぬ
卒業式
「好きです! 先生!」
私は頬を赤く染めながら、何回も言った言葉を発した。この発言はもう、何度目だろうか? 気持ちを何度も伝えても答えは同じ。
「いや、俺とお前の関係は先生と生徒だからな」
この一言で終わる。それはいつだって分っている。でも、好きな人は好きなんだもん! この気持ちの暴走は収まらない。
先生と私の出会いは私が中二の時、始業式で初めて先生が壇上に上がって自己紹介したのがきっかけだった。眼鏡をかけて、背が高くて、声がタイプで、そんな先生に一目惚れでした。先生を追っかけて約5年、あっちなみに私は中高一貫校に通ってるから、今は高校三年生。受験も終わり、学校に入り浸っているところ。
好きです、この言葉を会うたびに先生に声かけて、友達には呆れられて、先生もそろそろ飽きてきて、そんなころだと思うけど、私は諦めない。
「そろそろ、先生のこと諦めなよ、変態になってきてるぞ」
友達は諦め気味に、呆れ気味に、話かけてきた。
「いやいや、諦める訳ないじゃん! だって、好きなんだよ! 私の青春全部をかけてるんだよ!」
そうである、彼女は女子校暮らしなのである。そんな彼女に彼氏などできる訳もなく、青春は先生に向けられたのであった。
「そうかいそうかい、あんな立ってるときに体が斜め15度傾いて、声がキンキンで、顔がでかくて、そんなやつのどこがいいって言うんだか分らないが応援はするよ」
そんな女子高時代も明日で終わり。卒業式なのである。在校生として学校に入り浸ることもできなくなり、愛しの先生に会うこともできなくなるのである。
「明日、卒業式だから、私、その日を最後に先生のこと諦めようと思うんだよね」
「えっ、お前が! あんだけ好き好き言ってたのに?」
うん、だってもう会えないし。今までの関係は終わっちゃうし。
「お、おう、そうか、分かった」
この時の友達は結構真面目に私を心配した表情をしていた。
そして、卒業式の前に。
「先生、好きです! 今日でこれ言うの最後になっちゃうんですけどね」
「おう、そうだな、寂しくなるなぁ。まぁ、俺とお前の関係は先生と生徒の関係だからな」
「はい、そうですね」
私はしんみりした気持ちだった。これで終わってしまうのか。私の好きって気持ちは、恋は、青春は。
式の最中は何をしててもボーとしてしまった。名前を呼ばれたのに返事をしなくて隣の友達に突かれた。
そうこうして式は終わった。
みんなで集合写真を撮って、卒業アルバムにメッセージを書いて。
そんな中、私は先生の元に走った。卒業アルバムにメッセージを書いてもらうために。
だけど、出た言葉は違かった。
「先生、私、やっぱり先生のことが諦められません。好きです! 先生!」
「おう、相変わらずぶれないな、はい」
と言って先生は私に紙を渡した。
紙を急いで開くとそこにはメアドと住所が書いてあった。
「先生、先生と生徒の関係はどこにいったんですか?」
「だって、お前はもう卒業しただろ? 卒業したら、先生と生徒の関係はなくなる。いいんじゃない? メアドと住所ぐらい」
私はうれしすぎて、きっと顔が不細工になっていたんだろう。
先生は笑っていた。私はこの紙を一生大事に持っているだろう。そして、最高の卒業式だ!
好きです! 先生! 綿麻きぬ @wataasa_kinu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます