第278話 崩壊の武装商団〜とある渉外局長の悪夢
ふう、今回の取引も結構な額でしたね。
しかし身分が高くても心まで高尚ってわけにはいかないものですねぇ。
年の若い見た目の良い兵士をよこせですか……。
しかも自分たちでも必要な教育をするから、しっかりと指示に従える、従順な者を。
ほんとに何を教育するつもりなんでしょうね。
商品を提供しておいて、こういうのもあれですが、ほんとくクソみたいな連中でした。
あんな連中が大手を振るっている国だと国民も大変でしょうね。
まあ、ああいう連中がいてくれるからこそ、私達みたいな者が惜しい思いをできるので、何とも言えませんがね。
さて、今日の注文を施設に伝えて、今日は終わりにしますか。
警報?
珍しいですね、一体なんでしょうか?
周辺の魔獣はあらかた排除しましたし、どこかの国から襲撃でしょうか。
それだと思い当たる節は数多ありますが、ただここに襲撃をしかけられるような方々といわれると……。
「セラルヤ局長!」
「ちょうどいいところに、この騒ぎは一体何事ですか?」
「現在、この基地が襲撃をうけております! 非戦闘部署は至急退避の準備をおねがいします!」
「退避?」
基地を建設を始めたばかりの、防壁もままならない時期ならいざ知らず。
設備も兵器もそろった今の基地の状況で、我々非戦闘員に退避勧告ですか。
これは穏やかではありませんね。
「ちなみに相手はどこかの国の軍隊ですか? それとも竜とか?」
「いえ、襲撃者は不可思議な形の剣を腰に下げた一人の男です」
「は? 一人の男?
「はい」
「たった一人の男の襲撃で退避勧告ですか?」
「は! すでに基地内の防衛用魔動機兵の六割が沈黙。遠征用、対魔獣用、その他出撃できる全部隊が出撃しております」
は?
防衛用魔動機兵の六割?
全部隊が出撃?
「いったい何が起こっているのですか?」
「これ以上のことは私にはわかりません。わかりませんが、このままですとこちらの施設にまで被害が及ぶ可能性は高いと思われます。至急退避の準備を!」
「わかりました。急いで全員に退避準備に入るよう伝えます」
「ありがとうございます!」
どうやらただ事ではないようですね。
まあ、いざとなれば転移石で逃げればいいだけですが。
全員はむずかしいですが主要な人員だけは何とかなりますからね。
「セラルヤ局長!」
「今度は何事ですか?」
「非戦闘部署は至急退避を!」
「は? 早すぎませんか? たった今別の方から退避準備をするようにと」
「敵の強さが尋常ではありません! すでに防衛部隊は崩壊、出撃した他の魔動機兵も次々と破壊されています」
この基地の防衛部隊が壊滅とは、ただ事どころの騒ぎではありませんね。
これは本気で転移石の出番のようです。
主だったもの達を集めないといけませんね。
「至急退」
!?
伝令が消えた?
壁も床も天井も!
いや、これは建物の半分が丸々消えてなくなった?
何ですかこれは!?
一体我々は何に襲われているのですか?
「うーむ、抵抗する戦力はなくなったようだな」
!?
不思議な形の剣を腰に下げた男!
「あとは建物ばかりか。だがしかし御屋形様は徹底的にといっておったしな」
ま、不味い。
そうだ、転移石!
!?
転移石が反応しない?
一体どういうことですか?
「徹底的に切るだけか」
ひ。
ざ、斬擊が地面を割って!
転移石、反応してください、転移せ……き………。
……。
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