第277話 崩壊の武装商団〜とある機兵乗りの悪夢

 

 やっぱり商団の護衛は疲れるな。

 歩兵に比べりゃ魔動機兵に乗ってる分、まだまだ楽なんだろうが。

 あの上下動と長時間座りっぱなしというのもな。


 今回の経路は平地が多かったが、魔獣やら魔晶獣やらも多い場所だったからな。

 長時間の警戒しっぱなしってのもかなりきつかった。


「ケラルン」


「おう、ルカーシャー」


「長期の遠征お疲れだったな、これからみんなで飲みにいこうぜ。道中の街道で襲った街で、酒が手にはいったらしい」


「マジか、あの街に酒があったのかよ。でも高級品だろ? 俺らにまでまわってくるのかよ?」


「なんでもかなりの量が手に入ったらしいから、俺達にもまわしてくれるってよ」


 酒か、本当にひさしぶりだ。

 どうやら今日は最高の日らしい。


「ほら、早くしろよ」


「ああ、いま行く」


 !?

 警報?


「おいおい、これから酒にありつけそうだってのに、邪魔するやつはどこのどいつだよ」


 いや、ルカーシャー少しは焦ろうぜ。


「ルカーシャー、お前も機兵にもどれ」


「ちっ、しょうがねえな」


「魔獣かなにかわからないが、さっさと片付け手伝って酒にありつこうぜ」


「それもそうだな。それじゃまたあとでなケラルン」


「おう」



 ……。

 なんだありゃ?

 空に人が浮いてるな。


 あれは鴟梟族しきょうぞくじゃねえか。

 こいつはまた、珍しい種族が出てきたもんだ。

 捕まえて売れば一儲けだな。


 ん?

 何かばらまきやがった。


 !?


 基地内の建物が消えていく!?

 迎撃に出た魔動機兵も!


 瓦礫も残骸も残らないだと?

 くそったれ!

 なんなんだよ、あの攻撃は!


 あれはルカーシャーの機体。


 くそ、落とされた。

 近づくどころか反撃もできないのかよ!


「ルカーシャー!」


 くそったれ。

 機体の胸から下が……。


「け、ケラルンか」


「ルカーシャー、無事か?」


「ぶ、無事じゃあないな……機体と一緒に俺の下半身も」


「な!」


 くそ、こいつは……。


「俺はもう助からねぇ。ケラルン、逃げろ! ヤツはやばい」


「一体何がおこってるっていうんだ?」


「多分、誰かがやばいヤツの逆鱗に触れたんだろ。しかもとびっきりのヤツだ。格納庫も部隊も一瞬だ、一瞬で消滅しちまった」


「そんな事が」


「あり得るんだよ! この世界には俺ら商団みたいな小物なんかじゃなく、本当にやばいヤツってのが存在してるんだよ」


「そんな」


「この施設も師団もたぶんここまでだ。もしかしたら大元から全部が今日で終わるかも知れねぇ」


 ?

 ルカーシャー、何言ってんだ?


「もういい、ケラルンとにかく逃げろ!」


「まだ、残っていましたか。あらかた片付けたつもりだったのですが」


 鴟梟族しきょうぞく


「ケラルン!」


「次もありますので」


 でかい球体。

 まずい、基地やルカーシャーをやったやつか。


「逃げろ! ケラルン!」


「逃がしはしませんよ。徹底的にとの我が主から申し使っておりますので」


「ケラルン!」


 くそ!

 機体の腕がない。

 な、き、機体が、消えていく!


「なんなんだよ、これ」


 やばい。

 俺の腕も、このままじゃ俺も!

 なんとか、なんとか逃げないと。


 あ、足も。

 くそ、体も。

 くそくそくそ。

 消えて、消えてたまる


 ………。

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