第275話 潜入調査

 転移石で逃げてくれるのか。

 これはありがたい。


 走って追いかけるのはなぁ。

 余計なトラブルが起こったりもするし。

 何よりも面倒くさい。


 しかし、ヘラレントとサベローは何やってるんだ?

 あ、サベロー……。

 まあ、サベローだし大丈夫だろ。


 さて。

 さっきの師団長さんを追いますか。





 周囲を囲ってるのは風の防壁か?

 結構な敷地に色々設備もあって、こりゃ軍事基地って感じだな。


 それで師団長さんはと。

 いた!


「おかえりなさいませ、師団長」


「挨拶はいい。今すぐこの拠点を廃棄する」


 あれで完全に逃げ切れていないと判断してるのか。

 結構慎重なタイプなのかね?

 まあ、こういう荒事仕事で、慎重さがないヤツは上にあがれないか。


「は?」


「ノーゼノンに向かった商団が全滅した」


「それは師団長が率いていた?」


「そうだ。俺以外は全滅だ」


 それでも、流石におよがされてることには気付かないか。

 この世界の人達は、転移による逃走方法に信頼寄せすぎだよな。

 お陰で追跡する方は楽できるけど。


「至急手筈通りに進めてくれ」


「わかりました」


「おい、俺は少し席をはずす」


「は!」


 お、ソラハラヌさんが言ってた通信部屋に行くか?



 この部屋がそうなのか?

 ということはあそこにある、パイプが並んでくっついている変な魔方具が通信用の道具ってことか?


 なんか手紙みたいの書き出したし。

 どうやら正解かな?


 でかいトラブルはすぐに情報共有。

 内容は私情入れずに、わかっている事実だけ。

 詳細は後程か。


 うーん。

 この人、子どもをモノ扱いするヤツじゃなきゃなぁ。

 うちに面接来てほしいくらいなんだけどね。


 ん?

 またなにか書き出した。


 ……。

 何通も同じ内容を書くのか。

 送る道具はあるのに、書く道具とか写す道具はないのかよ。



 やっと終わったみたいだな。


 お、筒に手紙をいれ始めた。

 どうやら筒ごとに送り先が決まっているみたいだな。


 今触れたのが起動スイッチか。


 んー、どうやら時空魔法の魔方具みたいだな。

 送り先は全て押さえた。

 後は一つずつ潰していけばいいな。


 よし、これでここにも師団長にも用はないな。


「おつかれさん」


 !?


「誰だ!?」


「連絡手段が時空魔法の魔方具で助かったよ」


 ほんと、手間がかからなくで大助かりだ。


「伝書鳩みたいなアナログ手段だったら、追跡で死ぬほど苦労するところだった」


 一つ一つ全部を追いかけなきゃならないからな。


「お陰であんたが連絡の取れる、全ての拠点は確認できた」


「貴様、一体何者だ?」


「名前を聞くときは、まずは自分からって習わなかったのか?」


「馬鹿にしているのか!」


「その通りだよ。あんた、まさか自分が本当に逃げられたと思ってないよな?」


 まさか思ってないよな?


 え?

 この反応。

 思ってたのか!


「は? 本気で逃げられたと思ってたのか? そんなわけないだろ」


 流石にそれはないだろう。

 それとも何か特殊能力でももってたのか?


「あれだけの部隊が一瞬で全滅したのに、お前だけが無事なわけないだろうが」


 ああ、そういうことか。


「まあ、なんでか知らんがこの世界の連中は、転移すれば逃げ切れると思い込んでるからな」


「どう言うことだ!」


「転移程度じゃ、うちの領地に喧嘩売った奴は逃げ切れないってことだよ」


「お前の領地? 何を言っている?」


 えーと、普通に街中のその辺でみんな話してるし。

 お知らせみたいなものもあったと思うんたが。


「うーん、お前ら情報収集とかしてないのか?」


「そんなことは」


「ガンドラル村……」


「なんだ、知ってるんじゃないか」


 ああ、これはあれだな。

 与太話だと思われてたな。


 村の下に着く国とかあんまなさそうだし。

 新興の無名の村だし、しょうがないか。


「うん、まあ、あんまりないことだからな。真に受けなかったのはしょうがないけど」


「村に従属する国等あるはずがない!」


「信じるも信じないもお前の自由だよ。どうせお前らはここで終わりだ」


「なにを?」


「は? 国の施設に襲撃かけて、まさか無事でいられると思ってないよな?」


 なんだろうね、この世界の人達は。

 喧嘩売る人は多いんだけど、やり返されるって思ってない人が多すぎる。


「じゃあ、そういうことで」


 ま、俺には関係ないか。

 やられたらやり返す、それだけだ。

 

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