第228話

「ほう、これが栽培できそうな農作物のリストか」


「ヒダリ殿、私も拝見しても?」


「かまいませんよ」


「では失礼して……これは!?」


 ん?

 なんか変ものがあったか?


「あのヒダリ殿」


「どうかしましたか? ゼンムッサさん」


「ここにある酒の木というのは、あの飛天族が栽培している酒の木でしょうか?」


「たぶんその酒の木かと」


 元々魔窟や魔塔があった場所だったからなのか。

 亜種?にあたる、酒の木達にも住みやすい土みたいなんだよな。


「あれは門外不出なのでは!?」


「門外不出というか飛天族どうこうの前に、単純に持ち出しが難しかっただけですよ。一応許可は得ていますし」


 飛天族じゃなくて酒の木達にだけどな。

 ソシエルさんも、奥地にあるやつは問題ないって言ってたし。


「ただ、木一本栽培するのに場所を使いますし、なによりもかなり癖が強いのでそんなに多くを栽培するのは難しいかと」


 なんせこっちを攻撃してくるからな。

 まあそのへんは話が通じる木に来てもらえばいいか。


「いや、そういうことでは。そもそも木一本あるだけでも大変なことなのですが……」


「ゼンムッサ、今までの常識に囚われるな」


 ダチキッシュさんがなんかカッコいいことを。


「無駄に疲れるぞ」


 ……。


「と、兎に角、酒の木の件は大変ありがたいです」


「そう言っていただけると幸いです」


「それで? 今日ここに来たのはそれだけではあるまい?」


「ええ、流石ですね」


「リストなんぞ、書簡でやり取りするだけで特に問題はないからな。それをわざわざ貴様が持ってくる時点で、裏を考えるのは当たり前だ」


 うーん、確かに。

 全くもってその通りだな。


「今日お伺いしたのは、あの空き地を開墾する働き手のことです」


「ほう」


「新しく運営している探索都市なのですが、引退する探索者が多く出ることが予想されます」


「引退した、探索者達をここで働かせろと? あぶれた元探索者達による犯罪発生を防ぐ為の慈善事業か? 言いたいことはわからんでもないが、問題のある連中の受け皿になどなる気はないぞ」


 うん、まあ、まっとうな意見だよ。

 探索者ってのは名乗るのは簡単なだけあって、玉石混淆の石も多いみたいだからな。

 腕っぷしが強いだけの無法者とか普通はいらねーよな。


「そこはこちらで予防線を張ります。私共でしっかりと教育し、一定基準に達した者のみをお願いするつもりです」


「ふむ、だがそんな言葉のみではな」


「勿論、こちらから責任者を派遣しますし、当面の費用等もこちらで用意いたします」


「管理する人も、かかる費用も全て負担すると?」


「ええ、さらに言えば当面は少数で試しながら、継続していける事業かの確認をしていきます」


「ふん」


「ダチキッシュ様」


「わかった、受け入れよう。そもそも開墾する人間が全く足りていないからな」


 こんのタヌキ野郎め。

 まあ、国なんてもんを治める人間だからな。

 色々引き出そうとするのは当然か。


「では、責任者と移住予定者が決まりましたら、ご連絡させていただきます」


「わかった。この国の発展に役立つ者を期待させてもらおう」


「ご期待にそえるよう、努力いたします」


 第一段階はクリアか?

 まずはやってみないことにはな。

 細かいことはやってみながら考えるさ。


 その為に優秀な皇帝様を巻き込んだんだからな。

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