第226話

 理由はわからないが昨日の夜は大激戦だった。

 なんというかみんなの濃さが半端なかった。

 妻たちの間でなにかあったのかね?


 下手に詮索しても藪蛇になりそうだからな。

 こういう時は気にしないに限る。


「よう、村長」


「おう、サベロー。ちょうどいいところに」


「……」


「なんで沈黙するんだよ」


「村長のちょうどいいところって言葉が出たときに、碌な目にあったことがないからだよ」


 そうか?

 そんなことないだろ。


「あるんだよ」


 うーむ、今日も人の思考を読んでくるか。

 サベローの鋭さは、やはり半端ないな。


「まあ、いいや」


「いや何がいいんだよ? なんで俺の肩をつかむんだよ」


「じゃあ、行くぞ」


「いかねえよ」


「まあ、気にするな」


「おい、話を」




「それで今日は何の用だ?」


 ダチキッシュさん、なんか雰囲気が変わったか?


「お久しぶりです、ヒダリ殿」


 ゼンムッサさんは変わらずって感じだな。


「魔窟たちを移動させてからの状況の確認です」


「ふん。協会の連中と、それに連なる阿呆どもが右往左往している以外は順調だ」


「おい」


「それはよかった。それでですね今後の相談なのですが」


「なんだ」


「あの壮大な空き地を農地に変えようかなと」


「ほう、なぜだ?」


「空き地の土壌を調べてみたら、農作物の栽培に向いていることがわかりまして」


「おい」


 分析してみたらいろいろできそうな感じなんだよな。


「いつの間にというのも、貴様ら相手では愚問か」


「おい!」


「はあ、サベロー。今大事な話しの最中なんだ後にしてくれ」


「うるせーよ、ふざけるな。早く元に戻せよ」


「何が不満なんだ? せっかく玉座に座ってるってのに」


「座ってねーよ、置かれてるだけじゃねえか。というか玉座をこんな使い方していいのかよ?」


「いや、お前キングだし。玉座使っても問題ないだろ?」


「真面目な顔で何わけわかんねーこと、言ってんだよ。ダチキッシュ皇帝も止めてくださいよ」


「ふん、私はもう皇帝ではないからな。その玉座の持ち主であるヒダリ殿がそうしてるのだ、気になどせんよ」


「いや、気にしてくださいよ。あとなんで半笑いなんですか」


 あれだよなダチキッシュさん、結構ノリいいのな。


「ゼンムッサさん、笑っている場合じゃないでしょ?」


「いえ、この国の宗主であるヒダリ殿がそうしているので、たぶんきっと意味のあることなのでしょう」


「そんな顔で言われても説得力ないですよ」


「そういうことだから、少し黙っててくれキング」


「キングってなんだよ!」


 生首キングに決まってるだろ。


「それでですね、先ほどの話のつづきですが」


「うむ」


「おい、しれっと話を進めるな」


「うるさい奴だな」


「ダチキッシュ皇帝まで!?」


 うん、ダチキッシュさんは適応力たけえわ。

 よかったな、サベロー。


「よくないからな!?」


 だから思考を読むなよ。

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