第212話

 転送位置は問題なし。

 転送物の大きさの把握も完了。

 周囲の障害物もなし。


『それでは、移動させていただきます』


『ウム』


「お、おい、村長」


「今忙しいから、少し待ってくれ」


「さっきもそう言ってただろうが。訳がわからんことだらけだ。頼むから少しは説明してくれ」


「この魔窟を帰らずの森に作った新しい街に移す」


「は? 移す? 本気だったのか? というか新しい街? おい、さらに訳がわからんぞ」


「うるさいな、言われた通り少し説明しただろ」


「余計に疑問が増えたんだよ!」


 ここからはホントにサベローに構ってられないな。


「サベロー、ここからはかなり集中する。すまんが本気で無視させてもらうぞ」


「本気でって、今までのは意図的に無視してたのかよ!?」


「言葉の選択間違いだ、気にするな」


「間違ってたのはどこだよ!?」


 よし。

 行ける!


「……お、おい、何だこりゃ。魔窟が消えて地面に大穴が空いたぞ」


 なんとか成功かな?

 あとは一度現地に翔んで確認だな。


「村長、これはどういうことなんだ?」


「さっき言っただろ、魔窟を新しく作った街に移動させた」


「……」


「ほら、上手く移動できたか確認にいくぞ」


「……」




 とりあえず予定通りの場所だな。


『いかがでしょうか? なにか不都合があれば教えていただきたいのですが』


『フオオオオオオオ』


 なんだ!?


『コレガ別ノ土地。見タコトノナイ景色! 聞イタコトノナイ生物ノ声! 嗅イダコトノナイ香リ!』


 どうやら喜んでくれてるみたいだな。

 というか匂いもわかるのか。

 もしかしたら味覚もあるのかね?

 今度、食い物でも差し入れしてみるか。


「本当に魔窟を持ってきたんだね、村長さん」


「パンナートさんか? そりゃそうだろ。そのためにこの街を作ったんだ」


「いや、村長さんの言うことだから、本当だって言うのはわかっていたんだけどね。ねえ、アシウェス」


「そうですね。この目で実際に見るとやはり凄まじいですね」


「いつまでも驚いてるなよ。あと魔窟が4、魔塔が2こっちに来るんだ」


 とりあえず上手くいくみたいだからな。

 サクサク進めていこうかね。


『ウオォォォウオ』


「わかったよ、村長さん。でも本当にいいのかい?」


「なにがだ?」


「僕たちがここの運営をすることさ」


「なにか問題があるのか?」


「いや、ザーバレナのこともそうだけと。こんな外様も外様、つい最近来たような相手にいきなり街一つなんてさ」


『オオオオアゥゥゥオオ』


「出来るやつに出来ることを頼んでるだけだ。クリスやジジに街の運営なんざ出来ると思うか?」


「それは……。忠誠を誓った方の奥様達だし、答えは控えさせてもらうよ」


「だろ。 先とか後とか外様とか、うちにそんな余裕はないんだよ」


「あははは、そうか。うん、そうだね。村長さん後は任せてよ」


 だから任せるって言ってるだろうが。

 うちはポンコツ揃いだがらな。

 出来るやつを、遊ばせておく余裕なんてないんだよ!


『フウオオオォオオア』


「ところでさ、村長さん。この音はいつになったら止むのかな?」


「知らねーよ。というかこれから増える一方じゃねーか?」


「あはは……。そうか早く止んでくれるといいかな? 怪音が鳴り響く街なんて、人が寄り付いてくれないよ」


 確かにな。


「しばらくしたら飽きるだろ。多分」


「そうなってくれることを願うよ」


 さて、他の魔窟や魔塔を迎えに行きますかね。

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