第195話

「おい、貴様! 私の可愛い妹から離れろ!」


「まあ、落ち着け。わが息子よ」


「親父! あいつセフィにあんなに近づいてやがるんだぞ」


「な、おい! そこの若造、うちの娘になにをしている!」


 ……。

 初っぱなからトラブルかよ。


「聞いてるのか。私の娘から離れろといってるだろ!」


「おい、親父。いつからセフィが親父のものになったんだよ」


「生まれたときからに決まってるだろうが!」


「それなら俺だって立場は一緒だぞ。セフィと初めてあったあの日から、俺の人生はセフィの為にあるんだ」


「ふん、それなら私は」


「父様、兄様、落ち着いて下さい」


 ……濃いなぁ。


「セフィ、兄様が一番だよな?」


「セフィ、父様が一番だよな?」


「一番はサシチ様です」


 セフィさん、火に油を注がないでください。


「きっさまー! 俺の妹を誑かしやがって!」


「若造! 私の娘になにをした!」


「おい、親父。いつからセフィが親父のものになったんだよ」


「生まれたときからに決まってるだろうが!」


 またそこに戻るのかよ!

 全然話が前に進まねえ。


「誑かすだなど。サシチ様は私の伴侶となるお方。例え父様や兄様とて、あまり失礼な物言いは私が許しません!」


「言うようになったな、セフィ!」


「あの小さな娘が逞しくなったものだ。だが認めてほしくば我々を越えて見せろ!」


「わかりました。父様、兄様、いきます!」


「ご」


「が」


 なんなのこの展開……。

 結婚のご挨拶に伺ったら、パートナーが自分の家族をぶん殴って気絶させるとか。

 意味わかんねーよ。




「はじめまして、えっとヒダリさんでよろしいのかしら?」


 セフィは間違いなく母親似だな。

 性格は父親に限りなく近い気がするが。


「あら、でもセフィもヒダリさんになるのかしら?」


「はい、母様」


「どちらもヒダリさんね。なら、サシチさんとお呼びしてもいいかしら?」


「呼びやすいように呼んでいただければ」


「それじゃあ、サシチさん。私はセフィの母で、ソシエルといいます。これからよろしくお願いしますね」


「こちらこそよろしくお願いいたします。ソシエルさん」


 普通に挨拶してるが……。

 気絶中の二人は放置なんですね。


「もう家族になるのですから貴方も私の息子の一人よ。ソシエルさんなんて他人行儀な言い方は少し寂しいわ」


 今日が初対面なんだが。

 この人はこの人でえらい距離感の人だな。


「そう、そうですよ、サシチ様。私達はもう家族です!」


 うん、わかってるよ。

 セフィさん、だからそんなに興奮して色々押し付けないで。

 気絶してる二人が起きたら、また面倒くさいことになるからね。


「貴様! 何をしてる! 俺の妹から離れろ!」


「若造! 私の娘から離れろ!」


「おい、親父。いつからセフィが親父のものになったんだよ」


「生まれたときからに決まってるだろうが!」


 また繰り返すのかよ!

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