第173話

 流石異世界。

 ポケットから女性が生えてくるとは。

 っと、ナディとキョウの目がヤバイな。


「我が夫よ、その女はいったい?」


「ふん、汝には関係ないのじゃ。このチンチクリン」


「な、貴様とて同じようなものではないか!」


「ふん、妾のこの姿は仮の姿よ。本来の姿は汝とは比べ物にならんのじゃ」

 

 ……子どもの喧嘩かよ。

 しょーもない。

 というか、ナディはスタイルのこと気にしすぎなんだよな。


「ナディ。俺はお前のその体、好きだぞ」


「な、我が夫よ。きゅ、急にそのようなことを」


「主殿、このようなチンチクリンが好みなのか!?」


 いや、チンチクリンて。

 たしかに背が低いし胸も大きくないけど、そんなの気にすることか?


「いや、別に体型なんざ惚れる惚れないに関係ないだろ?」


「なんと!?」


 いや、驚くところか?

 そりゃ、好みの体型があるやつもいるかもしれんが。

 惚れる惚れないについては、そこじゃないと思うぞ。


「佐七さん、そこまででおねがいします」


 ん?


「ナディさんが動揺しすぎて固まってしまっています」


「っと、ナディはこの手の話はいまだに駄目そうだな」


 まあ、話はしないだけでしっかり甘えては来るんだけどな。


「というよりは佐七さんの不意討ちがいけないのでは?」


「そんなもんかね?」


「そんなものですね」


 ……いや、キョウさん。

 そんな何かを期待した目で見られても。

 一応、人前ですので頬で勘弁してください。


「まあ、いいでしょう。続きは夜にということで」


 今晩も激戦確定ですか。


「それで貴女はどちら様でしょうか?」


「ふむ、キョウカよ。汝とはすでに何度も顔を会わせておるはずなのじゃが?」


「どういうことでしょうか?」


「うーむ、姿は小さくなっているが、この黒い髪と黒い目に見覚えはないか?」


 ……。

 どちらも全く黒くねえし。

 髪は白だし目は金色ですが。


「あの、申し訳ありません。黒髪でも黒目でもありませんが」


「なにを言っている、そんな事あるはずが……ほ、本当じゃ! 髪が白くなっておる。どういうことじゃ!?」


 いや、どうもこうも。

 そもそも、どこのどなたかもわかんねぇし。


「いったい妾の身に何が起こっておるのじゃ?」


 いや、だから知らねーよ。


「よくわかりませんが、貴女はいったいどなたなのですか?」


「うぬぬ、妾は闇の女神じゃよ」


 は!?


「え!? 女神様ですか?」


「そうじゃよ。ほれ、この顔をよーく見てみるのじゃ」


 闇の女神ってこんな感じだったか?

 俺はぶん殴った時しか見てないからなぁ。

 顔なんか覚えてねえよ……。


「申し訳ありません、女神様の面影が全くありませんが」


 駄目じゃねーかよ。

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