第169話
買い取り、孤児院ときて次はなんだ?
「村長殿、先ほどの治療院の件なのですが、探索者にも解放していただくことはできませんでしょうか?」
医療を受けやすくね。
今度は医療制度か。
「それは別に作りましょうか。治療費用は相場がわからないのでなんとも言えませんが、探索者や一般の方々でも支払える範囲で考えましょう。そうそう、子ども向けについては基本的に無料でいくつもりです」
「は? それは本気ですか? 確かにそうなってもらえるのなら大変喜ばしいことですが、この村にはなんの利益ももたらさないのでは?」
「勿論利益はもらいますよ。治療を受けるために私たちの事業組織にとりあえずはギルドとでもしておきましょうか。これに加盟してもらいます」
まあ、子どもに関しては慈善事業でもいいんだけどな。
その辺は今後の調整だな。
「登録することが利益になりうるのですか?」
「なるように仕組みを作るつもりです」
うちには108号があるからな。
博士達に調査用のユニットを作ってもらえば、登録してくれた個人の情報管理もできるだろうし。
医療関係データを蓄積すれば、ある程度の医療を代行できる魔方具や医薬品の開発もできるかもしれんしな。
多数のデータを取り放題と思えば医療費なんぞむしろ安いくらいだろ。
「それに、この事業を行う上での目玉にもなるはずです」
「それは勿論そうなると思います。買い取り価格が上がり、怪我や病気の治療費用が安くなる。その上子ども達の面倒まで見てくれる。そんな夢のような施設を利用しないはずはありません」
「もちろん成功するかはわかりません。とりあえずはガウンティ王国に協力を仰いで王都あたりで運営してみましょう」
「そこまで話が進められるのですか?」
「多分大丈夫かと」
「わかりました。ではいまのお話をまとめたものを文書にしますので、是非ともガウンティ王国への提案をよろしくおねがいいたします」
提案ね。
その必要はないかな?
「その話、是非ともやらせてもらいましょう!」
ノーナさん、ノックくらいはしようか?
「ザーバレナさん、こちらはガウンティ王国のノーナ女王です」
「ザーバレナ殿、よろしくたのむ」
「よ、よろしくおねがいいたします。ザーバレナと申します」
うん、まあいきなり一国の女王とか、びっくりするよな。
しかもノリ軽いし。
「陛下、なかなか面白そうなことを考えたな。話を聞いていた文官達も乗り気だったぞ」
「ノーナさん、できそうですか?」
「どうせ金やらなんやらについてはガンドラルが出すんだろ?」
「それはもちろん」
「であれば問題ない。というか既に動き始めているしな」
こちらの意を汲んでくれてるのもあるんだろうがな。
面白そうなら即行動のお国柄は話が早くて助かるよ。
ノーナ女王に感謝だな。
「え、え」
「ザーバレナさんには申し訳ないと思いましたが、今までの会話は最初からガウンティ王国に聞いててもらいました。事業の運用を試せる宛が他にはなかったものですから」
「え、ええと」
「ザーバレナ殿、細かいことはあまり気にしないことだ。このガンドラルという場所、なによりも陛下と付き合っていく上で細かいことを気にしていては気が持たんぞ」
人を非常識の権現みたいに言うんじゃねーよ。
まあ、この場所の非常識さは認めざるを得ないが。
最近おとなしいが、何かあったとき対処の基準が消し炭とか消滅とかだからな。
「ああ、そうですよね。なんとなく吹っ切れました」
え?
今ので?
「ありがとうございます、ノーナ女王。まさに仰る通りです。一人で街を半壊させたり、家ごと他の場所に移動させたり、竜を二頭も娶ったり。そんなことが当たり前に起こる場所で、今までの感覚でいてはいけませんよね」
いや、普通に今まで通りでいてくれて構わないですよ。
「そうだ、私など陛下と会ってから日々が楽しくてしょうがない」
いや、ノーナさんは俺あんまり関係ないだろ。
ルル達と勝手に鍛治場で騒いでるの知ってんだぞ。
「私も楽しめるでしょうか?」
「ああ、ここには見たことのない世界が広がっているんだ! まずはさっきのギルドとか言うやつの話を進めようじゃないか。あれにはザーバレナ殿の理想がつまっているのだろう?」
「はい!」
「では早速ザーバレナ殿の理想実現の為に、我が国へ参ろうではないか!」
「はい!」
ザーバレナさん、ノーナさんのノリについてっちゃうのか。
結構暑苦しい感じだったのね。
「あ、あの村長さん」
パンナートさん、そういえば横にいたんだよな。
「多分大丈夫だと思いますよ、上手く補助してあげてください」
「はあ」
あれだな、パンナートさんはダラガナンさんと仲良くなれそうだな。
今度紹介してあげよう。
とりあえずはギルド事業、発進て感じかね?
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